研究課題/領域番号 |
19K14833
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
伊左治 雄太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), 研究員 (80836320)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヘム / 海洋鉄循環 / 定量分析 / 炭素安定同位体分析 / 窒素安定同位体分析 / 生物地球化学 / 海洋化学 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度確立したヘムBの分析法の高精度化に取り組んだ。具体的には、堆積物中のヘムBを定量する上で問題となるマトリックス効果の補正法を検討し、高速液体クロマトグラフィー/質量分析計を用いてより正確に堆積物中のヘムB濃度を算出する方法を確立した。これらの内容を合わせてヘムBの定量分析法および炭素・窒素安定同位体分析法を論文化し、Analytical Chemistry誌に発表した。加えて本年度は、夾雑物を大量に含む堆積物中からヘムBを単離・精製し、炭素・窒素安定同位体比を決定する手法を確立することにも成功した。 また、環境中のヘムB濃度の規定因子を明らかにするための基礎的なデータとして、様々な培養微生物(光合成生物、従属栄養生物、硫酸還元菌、鉄還元菌、硫黄酸化細菌、アンモニア酸化古細菌など)の細胞中ヘムB濃度の定量分析を行った。特にこのうちの光合成生物1種については、鉄濃度の異なる複数の条件で培養を行い、培養環境中の鉄濃度の変化に対する細胞中のヘムB濃度の応答を調べた。さらに、このうちの光合成生物3種とメタン菌1種については、ヘムBの単離・精製を行い、炭素・窒素安定同位体比を決定した。これは、環境中のヘムBの起源となる生物群を特定するための基礎的なデータとなる。今後は、本年度得られたこれらの基礎的なデータに基づいて、東インド洋東経88度測線のクロロフィル極大深度で採取した粒子態有機物中のヘムBの起源とその分布をコントロールする条件の解明に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ヘムBの定量分析法、炭素・窒素安定同位体比分析法を確立し、論文として発表することができた。環境中のヘムBの動態を解明するために必要となる様々な基礎データが得られており、当初の計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた基礎的なデータに基づいて、東インド洋のヘムBの動態を解明し、海洋鉄循環におけるヘムBの役割を明らかにする。また、堆積条件の異なる日本海、相模湾、アデン湾、北太平洋、ナミビア沖の海底堆積物中のヘムB濃度および炭素・窒素安定同位体を決定し、堆積物中のヘムBの動態の解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
(国研)理化学研究所バイオリソース研究センターから年度内に購入し、分析する予定だった培養菌株の生育が間に合わず、購入が次年度に持ち越しになったため。この次年度使用額は、(国研)理化学研究所バイオリソース研究センターからの培養株購入に充てる。
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