研究課題/領域番号 |
19K14834
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
齋藤 拓也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 特任技術副主任 (50760617)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / 流体包有物 / 熱水性石英 |
研究実績の概要 |
大気CO2分圧の変動を見積もることは、地球の表層進化を読み解く上で重要である。しかし、現状の大気CO2分圧変動の推定は、手法的にも復元可能な年代的にも限られている。近年、熱水性石英中の流体包有物を用いた古大気組成の推定が多く試みられている。海水環境で形成された熱水性石英は35億年前から4500万年前までの長期間に渡り形成されている。そこで、本研究では、35億年前から4500万年前までの熱水性石英中の流体包有物を用い、溶存イオン分析、溶存ガス分析を組み合わせて行うことにより、35億年前から現在までの大気CO2分圧変動を見積もることを目的としている。 令和2年度は、ブランク実験を行った。ブラジル産の純度の高い石英をマッフル炉で加熱することにより、流体包有物を含まない石英を作成し、前年度に改良を加えたガス分析ラインを用いたガス分析、並びにイオンクロマトグラフィーとICP-OESを用いた溶存イオン分析のブランク実験を行った。これらの分析において、バックグラウンドの上昇や顕著なシグナルが観察されないことを確認した。続いて、24億年前の熱水性石英試料を用いたガス分析並びに溶存イオン分析を行った。得られた流体包有物のCO2濃度、溶存イオン濃度は概ね先行研究と一致した。本研究の特色として、同一試料からAr同位体分析も行っており、この同位体比とCO2濃度や溶存イオン濃度を結びつけ、海水組成やpCO2を推定することができる。現在、得られたデータをもとに、24億年前の海水組成や大気CO2分圧の復元に向けて解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、24億年前の試料の分析に加えて、4500万年前、35億年前試料の分析を行う予定であったが、新型コロナの流行による緊急事態宣言により、実験施設へ行くことができない期間が長かったため、実験を十分に行うことができなかった。しかし、天然の試料のガス分析、溶存イオン分析を開始することができたため、今後の測定は速やかに実施できる体制は整っている。したがって、全体の進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、24億年前試料の測定を通して確立された実験手法を4500万年前、35億年前試料に適用し、分析を速やかに終え、地球史を通したpCO2変動を推定することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、出張が制限されていたため、旅費が未使用となった。また、すでにある消耗品を使用し実験を進めたため、消耗品費を使用する必要が無かった。設備備品として実体顕微鏡を計上していたが、本年度中に購入品の選定が終わらなかった。令和3年度において実体顕微鏡と消耗品の購入、計算機器の購入に次年度使用額を充てる。
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