研究課題
本研究では、35億年前から4500万年前までの熱水性石英中の流体包有物を用い、溶存イオン分析、溶存ガス分析を組み合わせて行うことにより、35億年前から現在までの大気CO2分圧変動を見積もることを目的としている。本研究では、これまで、35億年前、32億年前、26億年前、24億年前、4500万年前の試料の薄片試料の作成を行い、測定試料の記載を行ってきた。結果、4500万年前の流体包有物は均質化温度は110-420℃であった。他の時代の流体包有物の均質化温度は80-180℃であった。均質化温度を比較すると4500万年前の試料は沸騰した流体を捕獲していることを示唆しており、他の時代の流体包有物とは形成環境が異なっていることを示唆している。上記の記載をもとに各時代の試料の全流体包有物を用いた溶存イオン分析、溶存ガス分析をこれまでに行ってきた。結果、特に太古代の試料において40Ar/36Arが低く、海水成分に富んでいることが示唆される試料のCO2濃度は大きくばらつくことが観察された。また、CO2濃度とCa濃度に相関した結果が得られた。今年度は、これまでに得られた結果を元に、海水CO2濃度の推定を試みた。海水と熱水とを区別する指標としてNa/K比を用いたところ、CO2濃度とは相関が確認されなかった。このことはCaやCO2濃度は、熱水系における水岩石反応から独立していることを示唆している。そのため、本研究では、過去の海水のCO2濃度は測定した流体包有物の最低値以下という見積もりをすることにとどまり、大気CO2分圧変動に対し、新たな制約を追加することができなかった。今後、炭素同位体や海水ー液体CO2ー岩石の実験によりCO2やCaの挙動を明らかにすることにより、太古代の海水CO2濃度並びに大気CO2分圧変動をることが期待される。
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Nature
巻: 618 ページ: 489_493
10.1038/s41586-023-05987-9