研究課題/領域番号 |
19K14844
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
水上 孝一 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (20794019)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複合材料 / 渦電流試験 / 非破壊検査 / 炭素繊維 / 層間はく離 |
研究実績の概要 |
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は軽量で高い剛性と強度を有する材料であるが,繊維うねりや層間はく離などの特有の欠陥が発生し,機械的特性や強度の低下につながる.非破壊検査法の一つである渦電流試験は非接触検査が可能という利点を有するが,渦電流はCFRP表面近傍に集中するため,表面から離れた深部欠陥の検出が困難であるという問題がある.そこで,本研究では深部に発生する層間はく離,繊維うねりの検出技術の開発を行う.まず,有限要素法解析を用いて,層間はく離を有するCFRP中を流れる渦電流の分布を明らかにした.はく離部の存在によって渦電流は健全状態と比較してはく離部を迂回するような経路をとって流れるが,それによって磁界分布も伸長した分布となることが明らかになった.その分布をもとに,CFRPの層間はく離の検出に適した渦電流アレイプローブを提案した.本プローブははく離によって生じる電流経路の迂回を検出するのに適したプローブであり,従来用いられている一対の励磁-検出近接型プローブと比較して,優れたはく離検出感度を達成できることが明らかになった.また,本研究では,CFRPが持っている導電性のばらつきにも着目し,特にCFRP積層板の板厚方向の導電率と繊維方向の導電率がどの程度ばらついているかを詳細に調査した.有限要素法解析により,現実に起こりうる導電率のばらつきでどの程度渦電流プローブの信号が変化するかを調査し,その応答曲面を取得した.その応答曲面を用いて,渦電流プローブ下での異方性導電率をリアルタイムで推定する方法も開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CFRPの層間はく離に対して有効なプローブ構成を,当初の計画以上に早期に決定できた.また,直交積層CFRP板だけでなく,±45°層を含んだCFRPに対しても開発した手法が有効であることが分かっており,実用的に用いられるCFRP板への適用可能性を示すことができた.それに加えて,CFRPの渦電流探傷試験で問題となる導電性のばらつきの影響を明らかにすることと,そのばらつきを推定する手法を開発できたことは当初の計画以上の成果と言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで決定した渦電流アレイプローブを用いてより深部にある層間はく離の検出可能性を探っていく予定である.具体的には,探傷画像に対する処理によって,より深くにあるはく離による信号も明瞭化することを試みる.層間はく離について研究遂行の方針が定まったため,次は深部繊維うねりの検出に特化した試験法の検討と,うねりの定量化に関する研究を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は渦電流プローブの決定とその検証に時間を使ったため,プローブに適する測定装置の購入を見送った.翌年度には,渦電流場の重ね合わせのための多チャンネル測定システム等の導入や渦電流解析ソフトの購入,論文執筆のため助成金を使用していく計画である.
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