本研究課題では,ひずみ速度と温度依存性が考慮された構成式中の材料定数について,球体衝突試験によって簡便に評価する手法を確立することを目的としている.最終年度においては,前年度で構築した球体衝突に基づくひずみ速度依存性推定手法を改良し,異なる衝突速度で形成された2つの圧痕寸法からひずみ速度依存性を推定する独創的手法を考案した.従来手法では,ひずみ速度依存性を推定するために別途準静的引張試験を行い,降伏応力や加工硬化係数などの材料定数を同定しなければならなかった.新たに考案した手法は,準静的引張試験を必要としない極めて簡便な手法である.有限要素法による球体衝突解析を行い,本手法によりひずみ速度依存性を高精度に推定できることを示した. さらに,本手法を応用することで,異なる温度下で形成した2つの圧痕寸法から温度依存性を推定する手法を開発した.有限要素法による球体衝突解析を行い,本手法により,温度,材料,衝突速度,球体直径によらず温度依存性を高精度に推定できることを示した.前年度で開発した球体高速衝突試験装置を用い,純銅,純アルミニウム,低炭素鋼,ステンレス鋼に対して室温ならびに高温下で球体衝突試験を行い,得られた圧痕から温度依存性を推定した.また,低炭素鋼およびステンレス鋼に対し,室温ならびに高温下で準静的引張試験を行うことで温度依存性を評価した.これらを比較した結果,両者は概ね一致したものの,一部の材料についてはひずみ速度の違いに起因した差が認められた. 本ひずみ速度依存性および温度依存性推定手法の確立のためには,同一ひずみ速度下での試験と比較することによりその精度をさらに検証していく必要がある.
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