研究課題
金属材料の疲労現象の理解や評価、予測などの知見は学術的のみならず実用上も重要である。本課題ではき裂発生前段階での疲労損傷評価法の開発を目指している。疲労現象は転位の蓄積など材料の微視組織の状態と密接な関係があり、その評価方法として有力な回折強度曲線(ラインプロファイル)の逆解析法である“ラインプロファイル解析法”を用いた評価法構築に向けた基礎研究として、ラインプロファイル解析により得られる物理量と疲労現象との関係を明らかとし、将来的な疲労損傷評価方法の構築へと展開することを目指し実施した。2021年度は大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)のBL19にて行ったin-situ回折測定のラインプロファイル解析結果をまとめ、透過電子顕微鏡(TEM)による観察結果と併せて考察した結果についてまとめた。その成果は学術誌に投稿し掲載された。また、そこから得られた変態マルテンサイトの応力負担に関する課題について、回折測定データを再解析し、考察することで疲労過程における微視組織変化と応力負担についての知見を得た。この内容については現在学術誌への論文投稿および学会発表の準備を進めている。3か年の助成期間を通して、オーステナイトステンレス鋼の低サイクル疲労に伴う転位組織をラインプロファイル解析により、転位密度のみならず、転位の配列状態など従来は透過電子顕微鏡による観察などによる破壊検査でしか評価できなかった組織状態ついても評価できる可能性を見出すことができた。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Materials Science and Engineering: A
巻: 820 ページ: 141582~141582
10.1016/j.msea.2021.141582