前年度において、4次元ピンポイント渦電流法を用いて狙いを定めた箇所のCFRTPの溶融を確認した。剥離修復について、高さ75、100cmの落球衝撃試験で融着時の加圧力4、8MPaにおいて引張強さが60から80%の間で回復した。しかし、高さ100cmの落球衝撃試験で融着時の加圧力2MPaにおいて、引張り強さが小さくなった。この原因として、誘導加熱温度や時間、融着によるCFRTP内部の状態、短冊状への加工時の寸法の影響が考えられる。 上記より、はじめに、示差走査熱量計測定によるCFRTPの熱分析実験し、吸熱および発熱反応を調査した。CFRTPの母材樹脂の融点は260℃前後であり、その質量はCFRTP全体の4割ほどであることがわかった。次に、落球衝撃試験範囲を拡大し、高さ50、75、100cmで落球の重量500g、1kg、2kgで落球衝撃試験し、X線CTでCFRTPの層間剥離およびペレット部のクラックの状態を内部観察を行った。そして、剥離が発生したハット型CFRTPに対して、垂直方形コイルを用いて2分30秒誘導加熱し、卓上型ニュートンプレスを用いて加圧力8Mpaで30秒間融着した。同様に、X線CTでCFRTPの内部状態を観察した。落球衝撃試験のみと融着後を比較すると、融着後は、剥離部分の空隙の減少を確認できた場合もあったが、加熱によって剥離部分以外に気泡が広がる場合もあった。 最後にウォータージェット加工により、ハット型CFRTPを短冊上に抜き取り引張試験を行った。9個中4個で融着なしと比較して、融着ありが強度が高かった。落球衝撃試験でCFRTPの繊維破断やペレット部のクラックなど融着では修復が難しい場合や離部分以外が溶融しすぎる場合は逆に強度低下を招くことがわかった。以上より、本手法により誘導加熱温度と加熱箇所を制御することにより、CFRTPの剥離修復の可能性を示した。
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