本研究の目的は、金属材料表面の非破壊試験のために、フレキシブルに湾曲する磁気光学材料薄膜を開発することである。昨年度までの実績として、ビスマス置換型イットリウム鉄ガーネット材料粉体を作製し、有機バインダ中に分散させてからスピンコート法により成膜することで、プラスチック基板上にフレキシブルに湾曲する磁気光学薄膜を形成するための条件を確立してきた。 本年度は、実施計画を基に、ビスマス置換型イットリウム鉄ガーネットの鉄サイトの一部をアルミニウムで置換した材料の光学特性を明らかにして、センサ開発の設計指針を確立することを目的に研究を実施した。試作した磁性ガーネット粉体の組成は、(Bi0.5Y2.5)3(Fe3.8Al1.2)5(O)12である。有機バインダには質量パーセント濃度が15%のポリビニルアルコール水溶液を利用した。磁性ガーネット粉体と有機バインダの混合にはホットスターラーを利用して、室温で24時間攪拌することで混合液を作製した。このとき、粉体と有機バインダの質量比率を1:2とした。スピンコートの条件は、10秒間500rpmで回転中に塗布液を基板上に滴下し、その後、40秒間1500rpmで本成膜を行った。 作製した試料の光透過率を分光光度計によって測定した結果、可視光域において数%の透光性を確認した。アルミニウムを置換する前は透光性が確認できなかったことから、透過率を改善することができた。また、磁気光学効果の大きさとしてファラデー回転を測定した結果、昨年度までの実績と比較して5倍以上のおよそ0.2度の回転角が観測された。以上の結果は、ビスマス置換型イットリウム鉄ガーネットへのアルミニウム置換の有効性を示しており、今後のフレキシブル磁気光学材料薄膜の形成において、重要な設計指針を示していると考えられる。
|