研究課題
本研究は,金属酸化物半導体と炭素繊維の直接加熱を用いたCFRPの可逆的接合プロセスを提案し,接合層の接合・分離・再接合メカニズムの解明を目的としている.具体的には,接合層に各種炭素繊維と金属酸化物半導体粒子が含有された炭素繊維発熱体を配置し,炭素繊維発熱体への直接通電加熱による熱エネルギーを利用して,接合層の硬化促進と繊維強化を行う.また,酸化クロム等の金属酸化物半導体による触媒反応を利用して接合層の分解を高効率で局所的に行うことで,分離および再接合を可能とする高度な可逆的接合プロセスを探求することを目指している.本研究で提案する金属酸化物半導体と炭素繊維の直接加熱による可逆的接合プロセスにより修復や解体が容易になり,マルチマテリアル部材やCFRP部材の持続的な利用に貢献できる.本研究では,金属酸化物半導体が接合挙動および接合層の分解挙動に及ぼす影響を調査するため,酸化クロム粉末を一方向炭素繊維強化エポキシ樹脂(UD-CF/Ep)積層板に塗布し,CO2レーザー加熱を用いて,金属酸化物半導体による母材樹脂の酸化・熱分解挙動を評価した結果,酸化クロム粉末を塗布してレーザー加熱処理を行った場合では,炭素繊維周囲のエポキシ樹脂が効率的に熱分解されることが電子顕微鏡観察および重量測定により判明した.また,UD-CF/Ep積層板に酸化クロム粉末を塗布してCO2レーザー加熱処理を行った表面に熱可塑性エポキシ樹脂(フェノキシ樹脂)フィルムを加熱プレス成形により含浸させて抵抗融着接合を行った結果,表面処理無しの場合と比較して,引張せん断強度が向上することが確認され,再接合の際に有用であることが確認された.最終年度は,CFRPと金属の異種材接合への応用展開を図るため,前述の表面処理を行ったUD-CF/Ep積層板とアルミニウム板の異種材接合を実施し,接合挙動と引張せん断強度を明らかにした.
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日本材料学会 材料
巻: Vol.71, No.6 ページ: 495-500
成形加工
巻: Vo.34, No.2 ページ: 51-55