本研究では,Ni基超合金の水素脆化メカニズムを明らかにするため,高圧水素ガス曝露を施した試験片を用いて,応力緩和試験および引張試験を実施した.応力緩和試験では,固溶水素量の増大に伴い応力緩和量が増加する傾向が確認されたが,その変化量は小さく,水素脆化は転位運動の変化によるものではないと示唆された.引張試験では,水素の影響による延性の低下が認められた.室温以下の条件では,温度の下降に伴って延性は回復の傾向を示し,-196℃では水素による延性低下がほとんど認められなくなった.すなわち,水素誘起の延性低下の支配因子は,材料中に固溶された水素の拡散であることが示唆された.
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