研究課題/領域番号 |
19K14860
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大坪 樹 長崎大学, 工学研究科, 助教 (30755088)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 共焦点顕微鏡 / スペックル / 光触針 / 表面粗さ測定 / 表面凹凸形状測定 |
研究実績の概要 |
高分解能を有する共焦点顕微鏡は,表面微小形状の非接触測定に広く利用されている.しかし,測定値に不自然な短波長ノイズや突発的な異常値が混入するため,測定精度が著しく低下する.異常値の原因は,照射したスポット内の試料表面微小凹凸により生じる光干渉(スペックル)である.本研究課題においては,スペックルによって生じる異常値の抑制を目的としている.共焦点顕微鏡は,被測定位置と対物レンズの焦点が合ったときに受光量が最大になることを利用し,試料表面の凹凸高さを測定する.しかし,スペックルが発生した場合,反射光の結像状態が乱れるため,対物レンズの焦点位置では,最大光量を受光せず,焦点からずれた位置において,反射光強度が最大になり異常値が発生する.本研究では,これらの点を踏まえ,位相板を用いスペックルパターンを変化させることで,焦点位置において最大の受光強度を検出させ異常値を抑制する手法を提案した. 2019年度の研究においては,共焦点顕微鏡の光学系にCCDカメラを組み込み,スペックルパターンと受光強度を同時に観察・測定できる光学系を構築し,位相板がスペックルパターンに与える影響について検証した.その結果,三角形状に切り出した位相フィルムを円周上に複数配列した回転式位相板を集光レンズ直前に設置することで,スペックルパターンが変化することを確認した.さらに,回転式位相板を使用する前に比べて,対物レンズの焦点位置近くで最大光量を受光できる場合があることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画を概ね満たしていると考えている. スペックル観察光学系と被測定物材質の違いによって生じる検出精度の悪化防止光学系を基本的な共焦点顕微鏡光学系に組み込んだ光学系を構築し,形状計測とスペックル観察を同じに行えることを確認した.特に,三角形状に切り出した位相フィルムを円周上に複数配列した回転式位相板を集光レンズ直前に設置することで,スペックルパターンが変化することを掴んでいることは,現時点での大きな成果だと考えている.ただし,スペックルパターンの変化が形状計測結果に与える影響の評価については,現時点ではまだ一部課題を積み残していると言える,以上より,本研究ではここまでのところ,概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究で,位相フィルムを用いることでスペックルパターンが改善されることは掴んでいるが,まだ位相板の材質・形状評価実験のデータは少なく,定量的な評価には至っていない.まずはこの点を明らかにするための実験を実施する.また,「加工方法が異なる被測定面に対応可能な回転式位相板の設計製作」および「位相板による異常値抑制効果の検証」については,本学の精密生産技術研究室ならびに東京都立産業技術高等専門学校などからのご協力を得ながら,2020年度中に順次進めていく計画である.
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