研究課題/領域番号 |
19K14861
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小池 綾 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 専任講師 (70781417)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 粉末床溶融結合法 / 遠心機 / 高重力 / 3Dプリンタ / 相似則 / レーザ |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果として,回転機構とパウダーベッド(PBF)ユニットを組み合わせた試験装置を完成させ,10Gまでの基礎試験として予定していたすべての実験を完了させた.試作機においてはレーザ出力が不十分で密度の低い造形物ができてしまう問題が発生したが,ビームエキスパンダを利用してレーザのスポット径を縮小することで,PBFプロセスが問題なく実行できるよう改良に成功した.また,高重力場で動作できる精密ステージとリコータ用モータを選定しなおすなどの必要性もあり,これに伴う設計変更も余儀なくされたが,高重力PBF装置を作製するうえで重要なノウハウを蓄積できたと考えられる. 高重力場がPBFに与えるメリットを明らかにするとした本研究目的について,造形物の高密度化,高強度化,スパッタの抑制,微細粒子の利用可能性といった効果を実験的に示すことで達成したほか,金属組織の緻密化やボーリング現象の抑制など,計画以外のメリットについても次々に発見している.また,高重力場における物理現象の相似的変化を,「異重力場の相似則」としてまとめ上げ,体系化を図っている.したがって,当初の研究実施計画を十分に達成しながら,より応用的な内容にも発展させている点で,十分な進捗があったといえる.実用上でも,PBFの高密度化,高精度化の需要は高く,社会ニーズに合致して注目を集める技術が完成したといえる. また,研究成果については学術論文誌(CIRP Annals)にも投稿し,すでに受理されたほか,2件目の論文もすでに提出している.国内学会でも1件の発表を行ったほか,特許も1件申請しており,本研究における成果を社会に広く発信する準備が十分に整っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では計画2年目までに試作機を完成させ,ある程度の実験結果を出すことを目標とし,3年目にはこれらの実験結果を国際会議や学術論文誌への投稿をもって発信しよう考えていた.しかしながら現状ではすでに試作機で実行可能な10Gまでの高重力場造形試験をすべて完了しており,特許申請を行ったほか,国際誌へ2編の論文を投稿し,そのうち1編が受理されている.また,高重力場のものづくりを行う上で必要な学術体系化として,「異重力場の相似則」をまとめ上げ,学術においても産業においても非常に重要な研究成果を出すことに成功している.すでに3年目までに行おうと考えていた目標のほとんどを達成できたといえ,当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに予定していた計画のほとんどを実行できたといえるため,3年目には開発した技術の社会発信と,産業界からのニーズを受けた改良を加えていく予定である.とくに提案する「異重力場の相似則」を活用すれば,現行のPBFプロセスを超高速化できる可能性もあり,大幅な生産性の向上につなげられるなど,今までにない付加価値を金属3Dプリンタに与えられると考えられる.そのため,現行の装置を30G程度の出力まで対応できるように改良し,更なる高効率化,高精度化を実現する上での基礎的実験データを得る.また,学会発表と論文投稿も積極的に行う予定である.
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