本研究は、難削材料の切削油としてのイオン液体の適用を試みたものである。求める機能としては、低摩擦、被削材の高摩耗、工具を模した材料の低摩耗などを指標として研究を試みた。 初年度である2019年度では、イオン液体単体およびイオン液体を水に溶解させた場合において、低摩擦を示すイオン液体を合成し、評価してきた。2020年度においては、基油に溶解するイオン液体の合成に成功した。また、これらのイオン液体は、基油の極性、無極性に関わらず溶解するため、非常に魅力的なイオン液体であった。2021年度においては、これらの調合した加工油を使用して潤滑特性の評価および実機を用いた評価を行った。 また、実際の加工面における現象を理解するため、四重極質量分析計を用いることで、加工面でイオン液体がどのような反応をしているのかを調査した。その結果、新生面が現れる加工初期においてイオン液体の分解が見られたが、潤滑膜が形成されることで、分解は収まることが確認できた。反応膜の形成は、長時間の摩擦誘導時間が必要であることから、短い時間で形成される吸着膜影響していると考えられる。 また、実際の加工性について、難削材料として代表的な材料であるステンレス鋼とチタン合金を選定した。ステンレス鋼においては、低摩擦が確認され快削性が担保されると考えられる。一方で、チタン合金においては、摩耗関連は良好な特性を示したが、やや摩擦係数が高くなった。これは、加工による発熱や振動、加工精度に大きな影響を与えると考えられ、詳細なメカニズムを調査する必要がある。 また、学会発表や論文投稿といった、外部への発信を積極的に行い、他の研究者とのディスカッションを行った。
|