本研究では,放電プラズマ焼結法により作製されるTiN焼結体を工具電極に用いた医療用チタン合金の放電加工によって,加工と放電による微小凹凸形状付与に加えて,工具電極成分の加工表面への付着によるTiNコーティングの同時処理を行うものである.そのために,工具電極に用いた場合のチタン合金の放電加工において,その加工特性や加工表面へのTiN付着現象を含めた加工メカニズムを明らかにする.加工特性は加工速度,工具電極消耗率,表面粗さ,加工表面のビッカース硬さ,TiN層の厚さや成分分析により評価する. 本年度は,まず,SPS法による高密度なTiN焼結体の作製を行った.放電加工の工具電極には,加工精度を維持するために溶融除去にしにくいことが求められる.焼結体の相対密度が低い場合,内部の気孔により,みかけの熱伝導率が低下して溶融除去しやすくなる.これまでに相対密度98%のTiN焼結体の作製に成功しているが,相対密度は向上の余地がある.そこで,微粒TiN粉末を使用し,さらなる高密度TiN焼結体の作製を目指した.焼結時の昇温時間や保持温度を検討することにより,相対密度99.5%以上の焼結体が得られた. 次に,TiN工具電極を用いたチタン合金の放電加工特性を調査した.作製したTiN焼結体を用いて,チタン合金の放電加工を行った.その結果,工具電極の消耗は,工作物の除去と比較して2倍以上大きく,成形加工は難しいことが分かった.そのため,焼結助剤の添加を検討している.一方で,加工された表面は20μm以上のTiN皮膜の形成が認められた.
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