研究課題/領域番号 |
19K14869
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
千葉 浩行 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部3Dものづくりセクター, 副主任研究員 (30757373)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Additive Manufacturing / 金属積層造形 / 凝固割れ / 熱間割れ |
研究実績の概要 |
金属積層造形は溶融・凝固プロセスであるため、凝固過程中に凝固収縮と応力集中で凝固割れがしばしば発生する。凝固割れは、機械的性質を著しく低下させるため、金属積層造形を活用した高付加価値製品開発や金属積層造形の発展、普及の妨げとなる。鋳造や溶接では、多数の凝固割れに対する研究が実施されているが、金属積層造形における凝固割れに関する研究は少ない。本研究では、金属積層造形中のひずみや応力と凝固割れ発生の相関関係を解明するため、固液共存温度域での力学特性取得装置を開発した。造形中に造形物に発生する内部応力の制御は本来難しいが、本装置により、造形中の造形物に任意の引張荷重を付与することができるようになった。これにより、造形中に発生する内部応力と凝固割れの関係性を検証することが可能となった。また、本装置では、高速度ビデオカメラを用いて、造形中の割れを観察できる機構となっている。そのため、凝固割れ発生時の映像を用いて固液共存温度域における破断ひずみを算出することができる。以上のように、本装置によって、任意造形材料の造形中における固液共存温度域での力学特性を取得できるようになる。現在、ステンレス鋼(17-4PH、SUS316L)を用いて固液共存温度域での力学特性取得を行った。また、力学特性と共に破面観察や組織観察を通じて、割れの種類の同定を行った。材料による力学特性の違いも一部示唆されており、その原因についても確認を実施している。一方で、開発装置のブラッシュアップもしており、撮影条件、温度測定の改善も同時並行で行った。今後は、現在取得している固液共存温度域での力学特性の再現性の確認を行うと共に、得られたデータの解析を進めていく。そして、金属積層造形特有の凝固割れ支配因子の有無を明らかにする。また、その支配因子が造形条件により制御可能か確認し、凝固割れ耐性の高い造形方法の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究1年目では、金属積層造形中のひずみや応力と凝固割れ発生の相関関係を解明するため、固液共存温度域での力学特性取得装置を開発してきた。そして、2年目には、開発装置を用いて、固液共存温度域の力学特性取得を試みた。材料としては、17-4PHステンレス鋼とSUS316Lにて造形を行い、その際のデータ取得を行った。また、2色温度計等により、造形中の温度測定を試みた。さらには、造形した試験片の破面観察、組織観察により、装置の荷重条件や造形条件の調整と発生した割れの種類の同定を実施した。また、力学特性取得と同時並行して、開発装置のブラッシュアップも実施した。特に高速ビデオカメラでの撮影をより鮮明にするために、使用レンズ、カメラ設置位置等の調整を行った。これらの検証により、材料による固液共存温度域での力学特性の違いが一部示唆された。現在、そのN増し確認と原因分析を進めている。また、試験方法(荷重条件や造形時の荷重をかけるタイミング)により割れの形態が変化する可能性も示唆された。そのため、その割れの形態と条件を整理し、今後の試験を効率的に実施するとともに、実造形中の割れ欠陥の原因分析への活用が可能かも検討していく。上記状況の通り、申請当初の2年目の計画に対し、概ね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで実施してきた固液共存温度域での力学特性データのN増し確認により、本開発装置の試験再現性の評価を行っていく。それと同時に、取得データの解析と破面観察、組織観察の随時の実施により、金属積層造形における凝固割れ感受性評価を行う。また、現在取得してきている造形条件と凝固割れ感受性の関係性を整理する。そして、金属積層造形特有の凝固割れ支配因子があるかについても検証していく。この検証により、金属積層造形特有の支配因子が有ると判断できた場合、その支配因子を制御するための、造形条件を検討し、耐凝固割れ性の高い造形条件の確立を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
所持している自作の造形機の使用において、安全面等の理由により、2年目では、アルゴンガスを使用しない材料(自前のステンレス鋼粉末材料)での検証を実施したため、アルゴンガスや粉末材料の購入がなかった。また、新型コロナウィルス感染症の影響もあり、旅費等についても差異が生まれた。上記のような理由により、次年度使用額が生じた。一方で、3年目は、開発した装置の再現性評価用に、当初計画よりも多くの消耗品(ビルドプレート、粉末等)が必要になると予想される。そのため、当該助成金は、3年目分の請求助成金と共にこれら消耗品に使用する。
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