金属積層造形は溶融・凝固プロセスであるため、凝固過程中に凝固収縮と応力集中で凝固割れがしばしば発生する。凝固割れは、機械的性質を著しく低下させるため、金属積層造形を活用した高付加価値製品開発や金属積層造形の発展、普及の妨げとなる。鋳造や溶接では、多数の凝固割れに対する研究が実施されているが、金属積層造形における凝固割れに関する研究は少ない。本研究では、金属積層造形中のひずみや応力と凝固割れ発生の相関関係を解明するため、固液共存温度域での力学特性取得装置を開発した。造形中に造形物に発生する内部応力の制御は本来難しいが、本装置により、造形中の造形物に任意の引張荷重を付与することができるようになった。これにより、造形中に発生する内部応力と凝固割れの関係性を検証することが可能となった。本装置では、高速度ビデオカメラを用いて、造形中の割れを観察できる。また、二色温度計の計測アルゴリズムを利用して、高速度ビデオカメラの映像を解析することで、レーザー照射時の温度計測も可能であり、計測できた温度範囲から外挿する形で、破断発生時の温度予測を行った。これらにより、割れ発生時の映像を用いて固液共存温度域における破断ひずみを算出した。以上のように、本装置によって、任意造形材料の造形中における固液共存温度域での力学特性を取得できるようになった。さらに、造形条件による割れ傾向を確認した結果、エネルギー密度が高い造形条件において割れが発生しにくい傾向にあった。これらの結果を元に凝固割れが発生しにくい造形条件の選定を実施した。また、本装置での実験において、複数ビード分のレーザー照射をした際には、造形条件や、造形前に付与する引張荷重条件により、凝固割れ以外の割れも観察された。これら種々の造形中に発生した割れも系統的に整理することで、凝固割れ含めた造形割れ全体に対する対策につながると考える。
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