人体内で使われる補助人工心臓に搭載されるメカニカルシールのような摩擦システムにおいて,タンパク質溶液中での低摩擦の継続的発現と生体適合性が求められる.摩擦により界面に形成される血漿タンパク質由来の膜が低摩擦を発現しうる事は既に明らかにされており,形成機構の解明および材料の選択・設計指針が求められる.しゅう動面における血漿タンパク膜の変性抑制・吸着制御が低摩擦実現のための鍵を握る.本研究では摩擦部における血漿タンパク質の変性抑制を可能にするダブルネットワーク(DN)ゲルを用いたボールオンディスク型の摩擦試験をアルブミン・フィブリノーゲン溶液中で室温にて行い,しゅう動面における血漿タンパク質の吸着機構・低摩擦発現の形成機構を解明した. その結果,以下の結論が明らかとなった.・フィブリノーゲン溶液中において形成される血漿タンパク膜は滑り方向に平行な様相を呈しおよそ100nmオーダーの膜厚を有する一方,アルブミン溶液中において形成される血漿タンパク膜は10nmオーダーの粒状であること.・フィブリノーゲン溶液中における摩擦係数はアルブミン溶液中における摩擦係数よりも総じて低下すること.・フィブリノーゲン溶液中における摩擦係数は徐々に低減するなじみ挙動を発現すること.・アルブミンとフィブリノーゲンの混合溶液中における摩擦係数は両タンパク質種が単独で存在する溶液中における摩擦係数よりも低下すること.
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