本研究では,極限環境下で駆動する空圧ステッピングモータの開発を最終目標とし,異分野の研究とされる材料の加工技術の確立から機械要素(アクチュエータ)技術の設計・製作・評価までを一貫して取り組む.昨年度までに,当初計画していたラピッドヒータ方式から,ボルト締結によりフィルムに予圧を加え,簡易炉で加熱する事で溶着を行う方式へと溶着方法を改良した.また空気室によりフィンを動かし,ロータを送り出すことで回転運動を生み出す空圧モータを試作し,評価を行った.試作したモータは,①空気室の展開方向と回転方向が一致せず振動する,②フィンとロータの間で滑りが生じることから低出力であった. そこで本年度は昨年度末の計画に従い,①ロータに対して空気室を周方向に側配置し,②外歯車・内歯車の歯数差を利用して揺動運動から回転運動を取り出す,ワブルモータについて動作確認モデルの試作を行った.外歯車の運動方向を揺動運動に限定するために,コンプライアンス機構(複数の板バネ構造による拘束機構)を用いた.また空気室の配置変更に合わせて成形加工不要で製作可能な空気室形状に変更した.空気室とコンプライアンス機構は,互いに干渉する系であることから,両者の形状変更を交互に行い,設計の最適化を行った.試作したワブルモータは,最大トルク50mNm(昨年度の70倍),最大平均回転数 0.29rps(昨年度の1/3倍)と大幅な低速・高トルク化および高出力化を果たした. 以上,本構造によってポリイミドフィルム製空気室を利用した空圧モータが実現できる事を確認した.一方で,動作確認モデルであることから筐体が大きく,またコンプライアンス機構が性能過多であることから大型化している.今後,コンプライアンス機構を別機構で置き換える,筐体の最適化等を行うことで,一般的な電磁モータサイズまで小型化を進めたい.
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