CVDダイヤモンド・コーティング工具は安価かつ高硬度高成形性など優れた性能を持つため注目を浴びている.ここで,本研究ではfs-laserが炭素系膜に対して高精度な研削による刃先成形PLG とfs-laserによる結晶性向上のような表面改質効果を両立することを着目し,『高い切れ味』と『機能性付与』を両立した革新的な工具成形手法を提案します. 昨年度は紫外fs-laser PLG加工は高精度な刃先成形性と表面改質効果を同時に付与できることが確認された.今年度はns-laser PLG による表面グラファイトからなる低摩擦とfs-laser PLG による結晶性向上からなる高耐摩擦性の二点を基ついて,上記2つのレーザを組み合わせて工具の刃先成形加工を行った.具体的には,逃げ面はともにfs-laser PLGで加工し,すくい面をns-laserとfs-laserで同形状の2種類の工具を作成し,実際に切削実験により,切削性能を調べた.結果として,fs-laserで加工した工具は摩耗が低いと確認できたが,すくい面の摩耗の進行に際して小さな欠けが見られた.これは結晶性が高くなると,欠けやすいことが示唆される.また,ns-laser加工した工具での切りくずの方が,カール半径が小さいことから,ns-laserによる加工されたすくい面と切りくず間の摩擦が小さいことが言える. 全体の研究期間では,まずfs-laser照射による多結晶CVDダイヤモンドの結晶性向上のメカニズムを明らかにした.既存レーザ加工機を用いた工具の機能性向上(刃先成形と結晶構造二軸)を実現する最適な加工条件を探索した.最後はレーザを組み合わせることで,刃先各部分に異なる機能を付与させて革新的な工具を開発した.本研究の成果を発展させることで,工程集約化とともに,より総合的な表面機能を向上させる切削工具コーティングが期待される.
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