研究課題
近年,超臨界二酸化炭素や超臨界水は先進発電システムの作動流体や熱交換器での使用に留まらず,微粒子生成や抽出,薄膜生成など化学プロセスにも広く使用され,エネルギー効率や環境面の優位性からさらなる利用の拡大が期待されているものの,超臨界流体が混合した流体の流動現象は解明されていない.本研究はこのような複数の流体が混合した超臨界流体の流動現象を対象とし,化学プロセスや次世代発電サイクルの超臨界流体中における多成分混合流体の熱流動解析手法を確立することを目的としている.初年度となる本年度はREFPROPおよびPROPATHに定義されている多項式型の状態方程式の熱物性値データベースを直接使用した計算手法を構築し,加熱管路内部の超臨界条件下における炭化水素流動に適用した.炭化水素の加熱分解における化学反応について,既存のデータベースに基づいて反応モデル構築して,単成分のみを考慮した簡易モデルおよび複数成分を考慮した流動解析を実施した.複数成分を考慮した計算では化学反応よる質量分率から各成分の熱物性値を線形補間した値を用いた.それぞれの結果を実験結果と比較し,12成分程度を考慮することで加熱管路内部の流動を再現できることを示した.特に加熱面近傍における熱分解により低級炭化水素が多く存在し,単成分の場合と温度分布が大きく異なる結果となった.また,各物質および熱物性値に関して参照テーブルを作成し,それらを計算中で使用することで大幅な計算時間の短縮を達成した.
2: おおむね順調に進展している
これまでにREFPROPに定義されている多項式型の状態方程式を用い,加熱管路内部の超臨界オクタンの流動解析を実施した.壁面温度が高温となる条件下ではオクタンが熱分解反応を起こすことが知られている.本研究ではKUCRSに定義されている反応モデルを用いて,Canteraにて0次元計算を行うことで反応速度を温度のみの関数とした加熱分解モデルを構築した. また,反応後には複数の炭化水素成分が生成されるため,これらを4成分および12成分で近似した流動解析を実施し,12成分を考慮することで実験結果を再現できることを示した.REFPROPでは熱物性値が多項式で再現されているため,既存のSRK状態方程式で用いられるような係数の線形補間ができない.本研究ではそれぞれの物質の熱物性値を線形補間することで混合流体の熱物性値を再現した.次年度以降は詳細な混合モデルの導入を図る.超臨界二酸化炭素流動については遠心圧縮機内部の微小液滴が混在した流動解析を実施し,凝縮が起こる領域を特定した.一方で,これらの領域では疑臨界点に近い条件であるために数値的な振動が大きい結果となり,今後の対処が必要である.
次年度については,計画通りに三次元流動解析手法の構築を行う.その際に前年度に問題となった臨界点近傍の数値振動を低減する取り組みとして既存の手法として知られるDouble fluxを導入し,臨界点のみならず化学反応による急激な密度変化の領域に適用できるかを検討する.それらと共に非平衡凝縮を伴う微小液滴と流体が混在する先進超臨界二酸化炭素発電システム内部の圧縮機内部流動の計算を行う.これらの手法によって超臨界流体から気相および一部微小液滴が存在する問題を連続的に計算可能な手法を確立する.また,これまでに導入している質量分率に基づく熱物性値評価を検証し,より高度な混合モデルを導入し,混合モデルによる流動解析結果の差異を評価する予定である.炭化水素流動については高温条件下のみならず臨界点近傍条件下における加熱管路内部流動の解析を実施し,密度変化による流量不安定現象の再現に取り組む予定である.また,化学反応器として超臨界水を用いた水熱合成反応器内部の超臨界水と常温水容液の混合について流動解析を実施する.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Proc. ASME-JSME-KSME 2019 8th Joint Fluids Engineering Conference
巻: AJKFluids2019-4797 ページ: 1-8
Proceedings of Global Power and Propulsion Society
巻: GPPS-BJ-2019-009 ページ: 1-8
Proc. 16th Int. Conf. on Flow Dynamics
巻: 1 ページ: 1-2
日本ガスタービン学会誌
巻: 47-6 ページ: 389-395