研究課題/領域番号 |
19K14886
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
山田 格 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40772067)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロ流路 / 水の凍結 / 近赤外光 / 温度測定 / 界面同定 / 散逸粒子動力学法 / 計算誤差 |
研究実績の概要 |
マイクロ流路内で生ずる,水凍結過程における微小氷粒子の運動メカニズムの解明のため,当該年度は①実験については,1次元水凍結における界面進行についての調査,②数値計算については,DPD(散逸粒子動力学法)計算の,流れが存在する場合における時間進行法改良による計算誤差の評価を実施し,以下の成果を得た. ①1次元水凍結における界面進行についての調査:まず,熱流動解析問題との比較を容易にするため,熱流動および凍結進行が1次元問題を表現できるよう実験装置を改良した.同改良装置を用いた実験により得られた成果は以下の通りである. (a)水の相状態判別:水の近赤外吸光特性の相状態依存性を用いた,水の凍結中の水-氷界面の同定を実施した.結果として,水-氷界面において撮影画像の輝度値に大きな変化が生じ,同依存性を用いた界面同定が可能なことが確認された. (b)1次元水凍結における界面進行についての調査:次に,上記の同定法を用いて,マイクロ流路内における1次元水凍結現象について詳しく調査した.調査の結果,同凍結現象は水力直径と過冷度によって決定できるとがわかった.以上の研究成果を,国内の学術会議で発表した. ②DPD(散逸粒子動力学法)計算の,流れが存在する場合における時間進行法改良による計算誤差の評価:マイクロ流路内凍結を高精度に再現するため,DPD法の時間進行法の改良を進めた.特に,流れがある計算における同改良の評価を中心に実施した.その結果,時間進行法に分離型ルンゲ・クッタ(PRK)法を導入すると,流れのない場合では,計算誤差の大幅な低減および計算効率の向上が確認されたが,外力により流れをした場合の計算では,粘性散逸に起因するとみられる誤差の増加がみられ,それが時間進行法によらないことがわかった.以上の研究成果を国際ジャーナル論文および国内の学術会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に関しては,当初の予定どおり装置を改良およびマイクロ流路内の1次元凍結現象を可視化を行い,これを用いて,近赤外カメラによる水凍結の際の水-氷界面の同定に成功した(本成果は日本流体力学会中部支部公演で優秀賞を受賞した).本技術は,当初の目的である氷粒子の追跡に応用できると考えている.計算に関しては,DPD法による計算を実験と比較するには至っていないが,同手法による計算のさらなる高精度化を実現し,流れ場計算におけるDPD計算誤差の特性の調査にまで発展できた.また,これらの成果をジャーナル論文および国際・国内会議で発表できた.これらの成果により,DPD法を用いた水凍結計算の計算結果の信頼性の向上が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
実験に関しては,本年度の成果である水-氷界面同定手法を応用し,以下を実施する予定である.①水-氷界面同定の2次元凍結現象への拡張:現状では,1次元凍結現象を対象とした界面同定は可能であるが,より複雑な凍結現象にも同手法を応用したい.そこで,実験により2次元凍結現象を表現し,水-氷界面の2次元同定の可能性を調査する.②氷粒子の追跡:今年度は,界面の同定に着目し,実験における観察の範囲を広くとった.次年度は,観察範囲を狭くし(実験装置のレンズの倍率を上げ),マイクロ流路内水凍結における氷粒子の挙動観察を実施する予定である.
数値解析に関しては,流れ場における計算誤差の調査をさらに行うとともに,DPD法による水の物性の再現に関する調査も行い,実験と同条件の計算の実施につなげる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験開始当初は,マイクロ流路の製作を念頭においた予算を計上していたが,従来使用していた市販品を応用できたたため,同製作費が不要となり,次年度へ繰り越しとなった.
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