最終年度では,研究代表者の所属機関異動に伴い,初年度に改良した実験装置の移設(解体・再構築)及び初年度に製作した積層型二相流エジェクタを組み込んでの性能評価試験を行った. まず,実験装置の再構築については,圧力損失の低減を目的に初年度に施した「配管のサイズアップ」や「圧縮機油戻り用キャピラリの増設」などの改良点も取り入れ,新たに圧縮機や熱交換器などの各機器の配置高さの見直しを行うことでサイクル中に流れ込んだ圧縮機油が圧縮機へと戻りやすくし,蒸発器前後での圧力損失の更なる低減を実現した. 前述の改良を施した実験装置に一様断面形状の混合部を有する積層型二相流エジェクタを組み込み,初年度に算出したサイクル動作点(ノズル入口圧力8.67MPa,温度35℃)にて実験を行った.なお,実験では,エジェクタに吸引流を流入させずにバイパスさせることで,エジェクタ単体のポテンシャルを調査した.結果,混合部にて約0.8MPa,ディフューザ部にて約0.1MPaの圧力回復が確認された.この値は,圧縮効率0.8,機械効率0.9,駆動流及び吸引流ノズル効率0.8,ディフューザ効率0.8とした断熱理論計算によって得られた昇圧量0.91MPaと近しく,本結果より,製作した実験装置にて目的の性能を示せることが確認された. しかし,熱交換器の冷却水循環回路が初年度と異なり,外部(水道)から連続的に水を供給できない環境にあり,初年度に導入した開放型低恒温水循環装置(チラー)にて,冷却水タンクの水温制御を試みたが,一定に保つことができなかった.後に行ったエジェクタサイクルでの簡易的な熱量計算によると,チラー冷却能力700Wだけでは約2kW程度の冷却能力が不足することが判明している.このため,長時間にわたる評価実験が行えなず,エジェクタ内に発生する衝撃波の制御因子を特定するには至らなかった.
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