研究課題/領域番号 |
19K14891
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北村 拓也 長崎大学, 工学研究科, 助教 (30794648)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乱流 / スカラー輸送 / 多目的最適化 / 固有値直交分解 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,マルチスケール格子乱流中におけるスカラー輸送の物質拡散または混合促進を目的とした多目的最適化手法,データマイニング手法や深層学習などの情報技術および理論解析を通して,混合促進のメカニズム解明を行うことである. 令和二年度は,変分オートエンコーダーを用いて潜在空間における代表的な格子形状を教師無し学習により選定し,代表的な格子形状に対して,直接数値計算(DNS)を実施した.これにより,大域的最適化を行うための初期データベースを作成することができた.実施した結果より,混合促進と圧力損失はトレードオフ関係にあることが示された.また,圧力損失が乱流格子の遮蔽率の二次関数で記述できることがわかった.現在,論文投稿準備中である. 当初の予定では,令和二年度では流体粒子の計算を行いLagrange的な視点からスカラー輸送の理解を深める予定であったが,最適化におけるデータマイニング手法の適用可能性を広げるため,固有値直交分解(POD)の実施に予定変更した.PODをスペクトル理論の立場から整理し,プログラムの作成を行った.PODを実施した結果,格子近傍に見られるエネルギースペクトルの-5/3則はPODのモードの重ね合わせとして成り立つことが明らかになった.さらに,-7/3則の領域が共存することが明らかになった. さらに並行して,格子乱流におけるエネルギーカスケード機構を深めるため,一様等方性乱流のDNSの実施,データベースの作成およびクロージャー理論との比較をした.また,ヘリシティの流入を調整可能とする外力手法を提案した.これらの得られた成果はQ1論文であるJournal of Fluid MechanicsおよびPhysical Review Fluidsに掲載された.また,令和三年度二国間交流事業の参加決定および令和三年度スーパーコンピュータの重点支援研究に採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実施」の項で示したように (1)大域的最適化を行うための初期データベースを作成することができた. (2)PODにより,格子近傍において見られる-5/3則はいくつかのモードの重ね合わせから説明できることが分かった.また,-7/3則の領域が共存することが明らかになった.これは思いもよらぬ結果であり,現在詳細なデータ解析を行っているところである. (3)二国間交流事業の参加決定およびスーパーコンピュータの重点支援研究として採択された. 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
令和三年度は最終年度であることから,最適化の実行とこれまで得られた成果をまとめる. 一方で,二国間交流事業の参加およびスーパーコンピュータの重点支援研究に採択されたことから,当初の予定していた流体粒子の計算の実施を変更し,一様等方性乱流および格子乱流を対象とし,エネルギーカスケード機構の相補的な理解を試みる予定である.具体的には,次のことを行う予定である.①現在,エネルギー散逸率について数理的に新しい関係式を発見できているため,令和二年度作成したDNSのデータベースを用いて評価を行う.②粗視化解析やPODを通してscale-by-scaleのエネルギー収支を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた学会がonlineでの開催や延期となったため,次年度へ繰越する必要が生じた.繰越金は論文投稿における英文校正に使用する予定である.
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