研究課題/領域番号 |
19K14894
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤澤 信道 早稲田大学, 理工学術院, 専任講師 (10778153)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 遠心圧縮機 / ターボ機械 / 旋回失速 / 内部流れ / CFD |
研究実績の概要 |
昨年度と同様に、遠心圧縮機の幾何形状および流入条件がもたらす非軸対称性により発生する旋回失速の発生機構を解明し、失速の初生構造を数値解析と実験を用いて検証することを目的とし、以下の3点について研究を実施した。 1.実機試験により、渦型室により形成される不均一な圧力場および非一様流入条件が旋回失速の初生に与える基本特性を調査する。さらに、2.数値解析により、失速の初生位置およびその発生構造を明らかにし、遠心圧縮機特有の非軸対称条件下での汎用的な失速形成モデルを提案する。3.新たに壁面境界層内のせん断応力を測定する手法を確立・導入し、圧力計測と組み合わせることで、解析により明らかにした失速形成モデルを実験により検証する。 本年度は、失速セル前後の内部流れ場の特徴を捉えるために、ディフューザ流路壁面の壁面圧力計測およびディフューザ流路内での流速測定を行い、失速セルの周波数に同期させた渦位相平均手法を導入し、失速セル前後の特性を解析結果と比較検証する。数値解析より得られた旋回失速周りの流動構造と同様に、失速前縁において流れが加速することによる低圧域、失速後縁にて低速域に主流が衝突することによる高圧域が生じることを試験にて明らかにした。また、流速測定結果より失速セルはハブ・シュラウド交互に形成される発達した境界層剥離とケーシングからの逆流が干渉することにより構成され、旋回することが明らかとなった。さらに、羽根車に発生する旋回失速とディフューザ部で発生する旋回失速の干渉形態についても調査を行った。羽根車失速が形成されている羽根車において、羽根車出口部にてHub側からの低速域が放出されており、この低速域がディフューザ部の境界層剥離と合体しディフューザ失速が形成されることを示した。特に、羽根車失速形成時はディフューザ失速セルの個数が1つから2つへとセル数が変化することも明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、確立した熱線流速計と圧力プローブを組み合わせた可視化手法により、試験において失速セルの個数が変化する場合の羽根車吐出流の流れを可視化することが出来た。また、数値解析においては、順調にデータを取得および分析が進み、旋回失速のセル数が過渡的に変化するような試験と同等の現象を捉えることが出来た。また、試験と数値解析の両面において、予定を上回るスピードでデータ取得・分析が進み、想定よりも詳細な失速現象の解明を推進することが出来た。 実験および数値解析の結果より、羽根車失速が形成されている羽根車において、羽根車出口部にてHub側からの低速域が放出されており、この低速域がディフューザ部の境界層剥離と合体しディフューザ失速が形成されることを示した。特に、羽根車失速形成時はディフューザ失速セルの個数が1つから2つへとセル数が変化することが明らかになった。 そこで、羽根車に発生する旋回失速とディフューザ部で発生する旋回失速の干渉形態の解明を研究計画に新たに加える。
|
今後の研究の推進方策 |
1.旋回失速の初生機構の解明・失速形成モデルの提案 本圧縮機では、流量低下時に羽根車失速形成時はディフューザ失速セルの個数が1つから2つへとセル数が変化するという知見を得られた。また、本年度と引き続きディフューザ失速の初生から発達する過程での非定常的な渦構造を調査するために、スクロールも含めた圧縮機系全体を対象としたDES解析を用いた数値解析を行う。特に、出口流量を過渡的に減少させていった場合の失速セルの初生構造を明らかにする。また,その際に、羽根車失速の形成がディフューザ失速の初生にどのように関連するのかに焦点を絞り、試験および解析を行う。 2.数値解析結果の兼用のための、内部流れ可視化技術の確立・導入 研究計画としていたせん断応力計測において試験では有意な結果を得ることが出来なかった。そこで、昨年度と引き続き更なる研究の推進のために異なる可視化技術の導入の検討を行う。具体的には、旋回する翼内部の流れ場の可視化を非接触の可視化手法であるPIV手法の検討を行う。
|