研究課題/領域番号 |
19K14896
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山田 大将 長野工業高等専門学校, 電子制御工学科, 助教 (80825141)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマジェット / 発光伝播計測 / ストリーマ / シュリーレン計測 |
研究実績の概要 |
大気圧プラズマジェット (APPJ) 応用の更なる促進や当該分野の学理形成を目指すためには、プラズマの特性を明らかにし、作用機序の理解を進めることが重要である。本研究は、APPJに対して外部電場を印可した際に生じるガス流の屈曲現象の作用機序の理解を進めることでプラズマの主要特性の一つである荷電粒子情報の取得を目指し、放電条件 -放電現象の時間発展 - 外部電場印可時の屈曲現象の相関関係を明らかにすることを目的としている。 この研究では、APPJの外部電場印加時の屈曲において重要となる過剰荷電粒子の特定を進める。そのためには、放電条件を変更することで過剰荷電粒子の要因と考えるストリーマヘッドの極性やイオンの制御が必要となる。そこで、2019年度は、放電条件が異なるAPPJの作成、その基礎特性の計測、そしてシュリーレン実験系の作成、実験を行った。具体的には、放電条件として印可電圧の極性に注目し、印可電圧波形を正・負の極性及び両極性の正弦波に変更可能な電源を作成した。加えてガス種もHe、Ar、Neの3種に変更可能とした。これらの条件でプラズマが生成できることを確認し、電流電圧計測、気相中活性種計測及び発光伝播計測を基礎実験として行った。また、印加電圧と電流をモニターしながら高速度カメラを用いた発光伝播計測を行い、ストリーマと対応して電流が流れること、印可電圧の極性制御によりストリーマの極性が制御できていることを確認した。発光分光計測では、300-900 nmの波長域を計測し、生成活性種の同定を行った。同一のガス種であれば基本的には同じ発光スペクトルが現れたが、印可電圧の極性の相違によってそれらの強度比が異なることが明らかとなった。このことは、印可電圧波形によって、プラズマの温度や密度にも影響を与えていることを示唆する。これらの知見を元に今後の研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究では、初年度に実施することを計画していた極性を変更可能なAPPJの作成及び基礎特性計測実験を行う事で作成したAPPJの基礎的な特性を明らかにすることができた。加えて、当初は2020年度に行う予定であったシュリーレン光学系を作成し、ガス流の可視化について確認実験を行う事ができた。 基礎特性計測の結果では、ストリーマ極性が変化することでガス、電子温度や密度等のプラズマ特性も大きく変化している可能性が示唆される結果が得られている。このことは、外部電場印加時の屈曲現象へとも影響する可能性が考えられるため、今後の研究では、この点についても詳細に計測する必要がある。 以上のように、当初計画していたことは実施できたが、更に詳細に評価する必要がある事項が判明している。以上のことから「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究では、初年度に作成し基礎特性を明らかにしたプラズマを用いて、外部電場印加による屈曲実験を行い、条件による屈曲具合の相違の評価を行う。そのために外部電場印加実験系の作成を行う。外部電場印可実験系は 、高圧直流電源を二つ用いてAPPJを上下に挟むように電極を配置 (間隔10 mm) し、数kV/cmの電場を印可できるように作成する。実験は前年度に作成した測定領域が約Φ 50 mmのシュリーレン光学系を用いてガス流を評価する。この時、ガス流に加えて高速度カメラを用いてストリーマが伝播してく様子の評価も行う。さらに、前年度の研究から、印加電圧の極性によりストリーマの極性が変化し、電子温度や密度等のプラズマ特性も大きく変化している可能性が示唆されているため、外部電場印加実験時のプラズマについて、前年度よりも詳細な発光分光計測を行うことを考えている。具体的には、作動ガス種由来の原子の発光ラインから励起温度、窒素第二正帯の発光から振動、回転温度、Hβの発光から電子密度の解析を行うことを検討している。これらの解析は、前年度用いた分光器では難しいため、波長分解能の高い分光器を用いて実施する予定である。2019年度、2020年度の研究で得られたデータを整理・分析を行い、荷電粒子密度要因を検討し、その密度を推測することで、荷電粒子密度情報の取得へとつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた状況】この次年度使用額(66,619円)は、2020年3月にあった第67回応用物理学会春季学術講演会への参加のための旅費に使用する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響により会場での講演会実施が中止となったため、次年度使用額が生じた。 【使用計画】2020年度は、物品費として外部電場印加実験系に使用する高圧電源及びシステムシュリーレンを当初購入予定であった。しかし、研究室所有部品と2019年度助成金で購入した備品を活用してシュリーレン光学系を作成することができている。そこで、次年度使用額はシステムシュリーレン購入に充てる予定であった2020年度助成金の一部と合わせて、研究室所有分光器 (モノクロメーター) へのマルチチャンネル検出器取り付けのための改造費へと充てることを考えている。この改造は、各種温度や電子密度の解析を行うために行う。
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