本研究は、大気圧プラズマジェットに対して外部電場を印加した際に生じるガス流の屈曲現象の作用機序の理解を進めることでプラズマの主要特性の一つである荷電粒子情報の取得を目指し、放電条件 -放電現象の時間発展 - 外部電場印可時の屈曲現象の相関関係を明らかにすることを目的としている。ここまでの研究で得られた成果を下記で述べる。 1) プラズマ装置・実験系の開発:放電条件としてプラズマ生成時の印加電圧の極性を正・負・両極性の正弦波(~40 kHz)に変更可能なプラズマ源を新規作成した。また、プラズマジェットを上下から挟む形で外部電極を配置し、外部電場の印加が可能な実験系を開発した。この実験系はシュリーレン計測や発光伝播計測、発光分光計測も可能である。 2) 放電現象の観察:発光伝播計測や発光分光計測を行い、放電条件によってプラズマ特性がどのように変化するかを明らかにした。具体的には、プラズマ生成時の印加電圧波形の極性によって発光種が変化することを確認した。 3) ガス流屈挙動の観察:放電条件によって外部電場の有無により屈曲挙動が大きく変わることを明らかにした。具体的には、両極性の正弦波電圧を印加してプラズマを生成した場合は、下方向の外部電場発生時は流れの方向は大きく変化しないが上下両方の外部電極の周囲にガス流が現れた。正の正弦波電圧を印加してプラズマを生成した場合は、ガス流は外部電場の方向 (下方向) へと屈曲した。一方で負の正弦波電圧を印加してプラズマを生成した場合は、外部電場と逆の方向に屈曲する結果が得られた。 以上のように放電条件によってプラズマ特性や外部電場印加時のガス流挙動が変化することを明らかにしたが、明確な相関関係のあるプラズマ特性を特定することはできなかった。今後の展開として、発光伝播現象をガス流と同時観察することや、プラズマが生成した活性種の質量分析計測を検討している。
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