研究課題/領域番号 |
19K14898
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
伊藤 萌奈美 (笹森萌奈美) 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (80836065)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リブレット / 乱流境界層 / 壁面摩擦抵抗 / 抵抗低減評価手法 |
研究実績の概要 |
本研究では計測手法が限られる実環境においてリブレット効果を評価する手法を構築することを目的としている.具体的にはリブレット面上の対数速度分布の変化に着目し,滑面およびリブレット面上のそれぞれ一箇所の乱流境界層内速度分布からリブレット効果を評価することを目指している.初年度である本年度は①乱流境界層における風洞試験を実施し,②解析ツールの整備を行った.具体的な内容と得られた課題等を以下に記す. ①:ストレートリブレットを用いたゼロ圧力勾配および逆圧力勾配下の乱流境界層の風洞試験を実施した.逆圧力勾配下の試験は,実環境(航空機巡行時を想定)における圧力勾配の影響の分析に用いる.当初の計画では境界層内速度分布を熱線流速計測により取得する予定であったが,プローブが大きく振動する事象が生じ,計測誤差として影響することが予想されたため,今年度はピトーレイク計測によりデータを取得した.熱線流速計測については次年度以降に改善を図り再計測を実施する予定である.試験結果として,ゼロ圧力勾配下では従来の知見と合う抵抗低減の傾向を得た.逆圧力勾配下での試験は,圧力勾配パラメータが流れ方向に変化する非平衡な流れとなり改善の余地はあるものの,試験手法を構築するための有益な情報を得た. ②:ゼロ圧力勾配乱流境界層の風洞試験結果をもとに,ストレートリブレット面上の壁面摩擦抵抗と対数速度分布との関係式を導出し,従来のクラウザー線図法に倣って壁面摩擦抵抗をパラメータとした線図を作図した.しかし,得られたリブレット面上の壁面摩擦抵抗は想定よりも大きく,推定精度が十分でないことがわかった.本手法では対数速度分布の変化量が壁面摩擦抵抗の推算精度を大きく左右するため,まずその変化量と壁面摩擦抵抗の相関について再検証し,手法の精度向上を図る必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度にはゼロ圧力勾配下においてストレートリブレットの平均速度分布と壁面摩擦抵抗の関係式を導出し,その妥当性や精度の検証を完了して次のステップへ進む予定であったが,現状では十分な精度が確保できず,その改善を次年度に持ち越すことになった.また,当初計画では風洞試験における計測手法として熱線流速計測を用いる予定であったが,プローブが大きく振動する問題が生じており,こちらも次年度以降に改善を図る予定である.以上のようにいくつかの課題を抱え次年度に持ち越すことから進捗はやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得ている試験結果および先行研究等を用いて,ストレートリブレット面上対数速度分布の変化量と壁面摩擦抵抗の相関について再検証し,ストレートリブレット面上の壁面摩擦抵抗の推定精度向上を図る.また,熱線流速計測にて生じたプローブの振動を抑制するためにセッティングの改良計画を立て,再計測の準備を進める.その後,異なるリブレット形状について壁面摩擦抵抗と対数速度分布との関係式を導出し,ストレートリブレットとの関係式の違いを検証する.
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