今年度は,昨年度取得した実験データをもとに,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の燃え拡がりモデルの構築に取り組んだ.CFRP燃え拡がり時に表面の温度分布を赤外線カメラ可視化した際,炭素繊維を介した固相の熱輸送が顕著であることがわかった.従来の燃え拡がり研究は,アクリル樹脂などの熱伝導率の低い材料を対象としていたため,そのような固相の熱輸送は考慮されて来なかった.そのため,これまでに提案されてきた燃え拡がりモデルにも材料内部の熱伝導は含まれていない.そこで,従来の燃え拡がりモデルに固相の熱輸送を含める形で,CFRP燃え拡がりモデルを構築した.そのモデルをもとにエネルギーバランス式を立て,燃え拡がり速度を算出したところ,実験結果と良い一致が得られた.しかし,計算過程で利用する火炎長さは実験値を用いているなど,まだ改善すべき点が多々ある.今後はそれら改善点を修正し,限界酸素濃度や燃え拡がり速度などの燃え拡がり特性を定量的に予測することのできる燃え拡がりモデルへ高精度化していく.
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