昨年度構築した沸騰を含む脈動水流の実験系を用いて,そのスケール効果を明らかにするため,特に流量(時間平均Reynolds数),脈動波形(加速期間と減速期間の長さと比率),熱流束の大きさをパラメタとして,伝熱性能の実験と,気泡の生成・成長・離脱の様子の可視化を実施した. 実験条件は下記の通りとした.前年度に引き続き,直径 8 mm の加熱円柱を 1 cm x 1 cm の正方形断面のテストセクションに実装し,蒸留水をポンプで流動させた.電磁弁を周期的に開閉させることにより脈動流を発生させた.スケール効果の検証も狙い,時間平均 Reynolds数を 320 ~ 3150 の範囲で設定した.加熱円柱に付与した熱流束は 125 W/cm^2 ~ 320 W/cm^2 とした.電磁弁の開閉(1周期の時間は 0.6 秒~2.0秒とした)により脈動を誘起したが,このときに加速期間と減速期間の比率を変更した9種類の動作パターンを準備した.全ての脈動実験に対応して,時間平均流量が等しい定常流の実験も実施し,脈動流の発生と気泡の生成・離脱,伝熱促進への影響について比較を行った. 結果,脈動条件で,定常流付与時に比して同等,またはそれ以上の伝熱性能が得られた.特に特定の脈動波形においては,定常流に比して10%強の伝熱性能向上がみられた.このとき,向上が見られない条件では,加熱円柱の周囲で誘起された気泡が離脱できずに,円柱背後のはく離域に滞留した.一方,向上が確認できたケースでは,発生した気泡が減速期間において周囲の主流に押され,円柱背面から離脱する様子が確認できた.これにより,加熱されていない冷媒が円柱背面に流れ込み,円柱背面の伝熱を促進することで,全体の冷却能力が向上することが確認できた.沸騰曲線の変化も確認したところ,適切な脈動条件の選択により,同等の熱流束に対する過熱度の抑制もできた.
|