研究課題/領域番号 |
19K14921
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
志村 礼司郎 東京工業大学, 物質理工学院, 研究員 (70826586)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 酸化ハフニウム / 圧電特性 |
研究実績の概要 |
酸化ハフニウムは2011年に強誘電性が発見され、Siプロセスとの整合性が高い新規強誘電体材料の有力な候補として注目されている。一方で、当時圧電応用に不可欠な厚膜化が難しいとされていたため、圧電材料としての利用はほぼ検討されていなかった。研究代表らは従来報告されている膜厚より1桁厚い1 μm程度まで酸化ハフニウム基強誘電体膜の厚膜化に成功しており、圧電MEMSなど圧電応用に必要な足掛かりをつかんでいる。 以上の背景を踏まえ、本研究の目的は酸化ハフニウム基強誘電体の圧電材料への応用を見据え、圧電デバイス設計に必要不可欠な圧電定数の真値を明らかにすることである。 本年度は下記の成果を得た。 (1) (111)ITO//(111)YSZ基板上に厚膜を作製すると膜厚の増加と共に{111}配向から{100}配向へと配向が変化することが判明した。複数の配向が含まれるサンプルでは圧電性の解析を複雑にしてしまう。そこで(100)ITO//(100)YSZ基板を用いて{100}単一配向膜の作製を試みた。結果、{100}配向のエピタキシャル成長の厚膜が作製できた。また、(100)ITO//(100)YSZ//(100)Si上にも同様の結晶性および電気特性の膜が得られた。この成果は微細加工が容易なSi基板上に配向の揃った厚膜の作製が可能となるため非常に重要である。 (2) レーザードップラー振動計を用いた逆圧電測定により、膜厚1 μm程度の酸化ハフニウム基強誘電体厚膜の圧電特性を調べた。その結果、圧電性に起因する歪曲線を観測することができた。また、得られた歪曲線から圧電定数(d33)を算出することができ、算出されたd33は文献値と同程度であることが判明した。この結果により本研究の酸化ハフニウム基強誘電体厚膜は、これまで報告されている酸化ハフニウム膜と同等の圧電特性を有していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由として以下の2点が挙げられる。 (a)酸化ハフニウム基強誘電体厚膜特有の課題であった配向制御が達成され、エピタキシャル成長膜の厚膜が作製できるようなったため、課題達成前と比較して圧電性の解析が容易になった。 (b)これまで本研究の酸化ハフニウム基強誘電体厚膜の圧電特性に関して分析を行ったことがないため、この厚膜を用いて圧電性の分析をすることが妥当であるか評価する必要があった。当初の計画通り、従来法であるレーザードップラー振動計を用いた逆圧電測定により、酸化ハフニウム基強誘電体厚膜の圧電性を確認し圧電定数を計算できた。また、その値は過去の薄膜の文献値と照らし合わせて妥当な値であり、本研究で分析する酸化ハフニウム基強誘電体厚膜の圧電特性は信頼できるものであると確認できた。 以上の結果により今年度のノルマはほぼ達成できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は3点曲げによる正圧電測定を行い基礎データの取得をする。またダイヤフラム構造の基板上に酸化ハフニウム基強誘電体厚膜を作製し、通常の基板上のサンプルとの結晶構造や電気特性の違いを評価する。もしダイヤフラム構造上に作製するのが不適切と判明した場合、通常の基板に厚膜を作製した後に基板をエッチングすることを検討する。その後本研究で提案している圧電測定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
圧電測定に必要な装置の購入費が少なくて済んだのが主な理由である。当初、酸化ハフニウム基強誘電体厚膜の微量な変位を、本研究室のレーザードップラー振動計(LDV)で測定するのは困難であろうと予想され、場合によっては検出感度を向上させる補助部品やノイズ除去の装置を購入することも検討に入れていた。しかし、思いのほかLDVで正確に測定できていることが判明し、装置購入が必要なくなった。 翌年度では微細加工された基板上に酸化ハフニウム基強誘電体厚膜の作製を予定しているが、基板を加工するとそれに伴って応力など基板の状態も変化するため、通常の基板上で作製された酸化ハフニウム基強誘電体膜と同様の厚膜が得られるかは現時点ではわからず、厚膜の作製条件の調整および最適化が求められる可能性が高い。加えて本研究室では微細加工ができる装置を所有しておらず、微細加工は他の研究機関で行わなければならない。よって最適化のために微細加工された基板が多く必要となり、微細加工の費用或いは装置のリース代など基板作製の費用が増加する可能性がある。今年度の残りの費用はその基板作製の費用に充てるものとする。
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