本研究は、屋外環境下で長期的に行われる構造ヘルスモニタリングに適した新たなセンシング技術として、ファイバの曲げを光強度変化として測れるヘテロコア光ファイバセンサを用いた振動センサ及びモニタリングシステムの構築を目指している。具体的には、検査対象の固有振動数や特定の振動パターンに応じて適切な周波数応答性と感度を有する加速度センサ及びその設計方針を確立する。 2019年度は、センサ領域に当たるヘテロコア部及び変位-曲げ変換機構を再構築し、ヘテロコア光ファイバの低伝送損失性や熱的非依存性を保持したままセンサ感度を10~100倍程度向上させ、με単位の歪みを検出できる程の性能を実現した。さらに、計画時点で提案した3つのセンサ方式(a.振り子方式、b.ファイバ梁方式、c.マイクロフォン方式)の内、b.ファイバ梁方式では、ファイバを円弧状あるいは片持ち梁状にして梁となるファイバのたわみ量を検出することで、数十Hz~数kHzにおける安定した周波数応答性を実現した。さらに、a.振り子方式の加速度計は数Hz単位の極低周波振動の計測に特化させ、高架橋上を車両が走行する際に生じる振動から橋梁の動的なたわみ量の推定実験を実施した。 2020年度は、a.振り子方式を改良して片持ち梁状の振動子に生じるたわみを歪として検出するヘテロコア・光ストレインゲージ式加速度センサを考案した。その結果、数kHzにわたる広域な周波数応答性と高い検出精度を両立させられる可能性を見出すことに成功した。最終的には大規模建造物からモータ・エンジンなどの動力装置までを対象にモニタリング性能試験を行うが、センサの出力値はほぼリアルタイムで測定可能、かつ数kHz以下の振動計測が可能である。これらの成果に基づき、低周波領域におけるロバスト性とコスト効率に優れた光ファイバ式振動計測デバイスの実現に大きく進展した。
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