研究課題/領域番号 |
19K14931
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
櫻田 陽 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90442681)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 平面減衰機構 / 精密位置決め装置 / 分数階微積分モデル |
研究実績の概要 |
ナノテクノロジーを支える基盤技術として,ナノスケールでの位置決め技術が必要不可欠であり,多くの分野において重要な要素である.これらの精密位置決めを行う動力源として積層型圧電素子(以下PZT)を用いられることが多く,精密位置決めに適した推力発生素子である.PZTは,精密に変位をコントロールすることが可能であるが,変位が小さく,推力発生方向以外からの外力に比較的弱いことから,素子を保護し且つ変位を一方向に拘束しながら拡大する機構と組み合わせた精密位置決め装置として応用されることが多い.また,ナノスケールでの位置決めは,精密な駆動信号を高速に制御するため,変位拡大機構にも数kHzオーダーの高速な動作が求められる.高速な動作は,高い共振振幅を有する周波数特性も併せ持つため,高精度な位置決め性能を実現するためには,変位量を維持しながら,高い共振振幅を抑制しなければならない.本研究では,積層型圧電素子と変位拡大機構を組み合わせた精密位置決め装置を高速高精度に位置決めするために,高周波数で非常に高い共振振幅を抑制する減衰機構を検討し,精密位置決め装置と減衰機構を合わせたシステム全体を制御手法の開発を進めている.その第一段階として,従来までにない位置決め方向に対しせん断に作用する薄く平面状の減衰機構について,高周波数における特性を明らかにする実験とシミュレーションを行った.1mm以下の薄く平面状の減衰機構の特性を測定する機器は,現状市販されておらず,減衰の分野におけるJIS規格の策定に参画している小野測器からご助言を頂き,実験装置を試作した.並行して,3DCADソフトのソリッドワークスを用いて,シミュレーションを進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来までにない位置決め方向に対しせん断に作用する薄く平面状の減衰機構について,高周波数における特性を明らかにするため,実験装置を試作した.1mm以下の薄く平面状の減衰機構の特性を測定する装置は,現状市販されておらず,減衰の分野におけるJIS規格の策定に参画している小野測器からご助言を頂き,実験装置を試作し実験を始めた状況である. 並行して,3DCADソフトのソリッドワークスを用いて,シミュレーションを行った.1mm以下の薄く平面状の粘弾性体のシミュレーションは,メーカもケーススタディが無いようで,新たな試みであったが,減衰機構を構成する拘束板と粘弾性体の初期条件を変更した場合,周波数特性の共振周波数の変化と共振振幅の変化について,事前実験データに近い傾向が得られ,一般的なバネ・マス・ダンパーの1自由度振動系では,表現できない特性を確認できた.予め想定していた,バネ定数と減衰係数を複合させた項が必要であることが実験結果とシミュレーションで明確なり,本研究で導入する分数階微積分の新たな手法の有効性の一部を明らかにすることができた. 同じ周波数特性の傾向であるが,周波数の変化度合いと共振振幅の変化度合いが,異なる周波数領域においてバラツキがあるため,シミュレーションの拘束条件等を更に検討しなければならないと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
せん断に作用する薄く平面状の減衰機構について,試作した実験装置を用いて,シミュレーションとの差を検討するデータの精度を上げるため,また,減衰係数や固有角周波数,分数階の次数がモデルの周波数応答に与える影響を把握する必要があるため,実験サンプルを増やし,測定を進める. 精密位置決め装置のシステム全体としての特性をモデル化するため,分数階微積分の新たな手法を適用する運動方程式および伝達関数の検討を進める.最終的には,モデル化した伝達関数を制御系のコントロ-ラに展開し,従来までの制御性能および新たな手法の制御性能の比較検討を行い,分数階微積分を適用した制御系設計のコントローラ設計手法について,検討を進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末に参加予定の日本機械学会東北支部講演会および精密工学会春季大会が中止になったため,予算の執行が滞った.今年度は,参加予定の学会等,一部遠隔による講演会となりそうですので,その分の予算は,減衰係数や固有角周波数,分数階の次数がモデルの周波数応答に与える影響を把握するため,実験サンプルを増やす計画です.
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