本研究では,子供や高齢者の利用が想定される幼児同乗自転車,三輪自転車などの一般的な一人乗りの二輪自転車とは異なる装備や形状を有する自転車の交通事故実態の解明を行う.事故の傾向の分析,及び衝突時における乗員の挙動を基に受傷の状況を明らかにすることで,事故の低減,被害の軽減に資する安全教育や安全技術を検討するための土台を形成することが目的である. 幼児同乗自転車については,出会い頭事故,追突事故を模擬して,リアキャリアに幼児用座席を設置した自転車に自動車を衝突させる実験を行った.自転車には成人女性を模擬した人体ダミー及び3歳児を模擬した人体ダミーを乗車させた.自転車のタイヤサイズ,幼児用座席のヘッドレストの有無,シートベルトの着用条件を変化させ,幼児ダミーに与える影響を検討した.実験の結果,出会い頭事故の形態では自動車との衝突,路面との衝突の二つの場面において,追突事故の形態では自動車または幼児用座席のヘッドレストとの衝突,大人ダミーとの衝突,路面との衝突の三つの場面において,幼児ダミー頭部に大きな加速度が生じた.幼児ダミーの挙動は,シートベルトの着用条件により大きく変化し,シートベルト着用の条件では幼児ダミーは座席に拘束されたため,衝突開始から停止するまで自転車と一体となって移動した.一方で,シートベルト非着用の条件では,衝突により幼児用座席から投げ出される傾向にあった. 三輪自転車については,出会い頭事故,追突事故,斜め横断時の事故を模擬して,前輪が一輪,後輪が二輪の三輪自転車に自動車を衝突させる実験を行った.自転車には成人女性を模擬した人体ダミーを乗車させた.実験の結果,概ね一般的な一人乗りの二輪自転車と似た挙動となったが,低速の追突事故では自動車との衝突後に人体ダミーが三輪自転車後部のかごの上に落下して自転車とともに前方に押し出されるなど異なる挙動も観察された.
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