本研究の目的は,何らかの作業においてフェーズ毎に変化する人関節インピーダンスを推定し,運動学的な情報と関連付けてタスクを記述することである.本年度は実際にタスクの中で関節インピーダンスを得る実験が予定されていた.対象タスクは社会的需要を考慮して再選定しており,本年度に実施した内容は歩行中の足関節インピーダンス推定と,ペグインホールタスク中およびデビルスティックジャグリング中の手関節インピーダンス推定の3項目である.それぞれのタスクで3名ずつの参加者の協力を得て実験データを取得した. 歩行中の足関節については,補助的に開発を進めてきたダイレクトドライブ型の摂動入力装置を用いて,歩行フェーズのうち,特に足首の可変柔軟特性が重要な役割を果たす踵接地時の関節インピーダンスを推定した.実験条件としてトレッドミル歩行と床歩行の2通りを実施した.特に床歩行時のインピーダンス推定はこれまでにほとんど実施例がなく,ここで得た成果を国際会議SICE SII2022で発表した. 手関節については,前年度に確立させた力センサレスの推定手法を用いて,各タスクのサブフェーズごとに推移するインピーダンスを推定した.実験結果より,事前の予想や参加者の運動感覚と矛盾の無いインピーダンス推移を確認した.ペグインホールタスクについては,特にペグボードとの物理的相互作用を行うサブフェーズにおいて,参加者ごとに異なった運動意識が関節インピーダンスの調整に反映されている結果を確認した.デビルスティックタスクについては,スティックの動きを器用に操るための手関節の使い方や運動生成に関する知見を得た.得られた成果の一部はそれぞれ国内学会ロボティクス・メカトロニクス部門講演会2021と国際会議IROS2021で発表済みである.
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