研究課題/領域番号 |
19K14941
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
東郷 俊太 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30751523)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ロボットハンド / ハンドシナジー / 主成分分析 / ワイヤ牽引機構 / 干渉機構 / ソフトロボット / ソフトハンド / ソフトフィンガー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヒトの手指運動の基底であるハンドシナジーを,機構表現としてロボットハンド実機に搭載することで,少数のアクチュエータで多様な手指運動を実現するロボットハンドを開発することである.ハンドシナジーを機構表現するには,アクチュエータ出力の足し算と掛け算を行う機構を考慮する必要がある.それらの機構は,ワイヤ牽引によるアクチュエータ出力伝達と,動滑車を組み合わせることで実現可能であるが,機構が大きくなりすぎてしまう.そこで今年度は,小型シナジー機構開発の足がかりとするため,ワイヤ牽引のロボットハンドの作成および,小型ワイヤ干渉駆動機構のロボットハンドへの実装を行った.小型DCモータを中手骨部に配置し,各指をワイヤ牽引による劣駆動で駆動させるロボットハンドを開発した.これにより,アクチュエータをロボットハンドに内蔵しながらも,ハンド機構の多自由度化に成功した.また,市販のサーボモータの基板と可変抵抗を取付けることで,容易にPWM信号で各指を制御できるようにした.また,ワイヤ干渉駆動機構を内蔵したロボットハンドも作成した.ワイヤ干渉駆動機構とは,ワイヤ出力を各関節で干渉させることで,大きな出力を発揮する,すなわちアクチュエータ出力の足し算を可能とする機構である.動滑車によるアクチュエータ出力合成部を,ハトメとスプリングアウターを組み合わせる機構を採用することで,動滑車機構を小型化することに成功した.また,干渉機構の出力を確認したところ,理論通りにアクチュエータ出力が合算されていることを示した.今後は,開発したアクチュエータ内蔵ロボットハンドと小型ワイヤ干渉駆動機構を組み合わせることで,ハンドシナジーを機構表現することを目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症により,大学への入講制限の時期があり,ロボット実機の開発に多少の遅れが生じた.しかしながら,ハンドシナジーを機構表現するための要素技術を開発した.一つは,小型のアクチュエータをハンド内部に埋め込んだロボットハンドである.アクチュエータの小型化とワイヤ牽引による,指の劣駆動機構を構成できた.もう一つは小型のワイヤ干渉駆動機構をハンド内部に搭載した.アクチュエータ出力を足し算する機構であり,ハンドシナジーの力合成部分に非常に寄与する機構である.これらの要素技術を組み合わせることで,ハンドシナジーの機構表現を可能にすると期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年度に開発した要素技術を応用することで,ハンドシナジーの機構表現に挑む.アクチュエータ内蔵ハンドの開発経験によって,アクチュエータとワイヤ牽引機構をハンドの内部に設置することができた.ハンドシナジーを機構表現するにあたり,アクチュエータの数をさらに減らすことができるので,機構を設置可能な体積に余裕が生じる.その部分に,ワイヤ干渉駆動機構ハンドの開発で得た,小型のアクチュエータ出力の合成機構を搭載する.アクチュエータ出力の掛け算部分は,ワイヤ牽引のドラムの直径で機構表現でき,足し算部分は,開発した動滑車機構を小型化する技術で機構表現する.また,把持性能を高めるために,機構に粘弾性をもたせる必要があることもこれまでの研究で明らかになっている.牽引するワイヤそのものを柔軟にすることで,関節部分に柔軟性を与えることが期待できる.初年度に抽出したハンドシナジーをそれぞれ出力でき,またその合成によって様々な手指姿勢をとれることを目標とする.
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