研究課題/領域番号 |
19K14944
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
堀井 辰衛 東京工業大学, 生命理工学院, 研究員 (90839226)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 誘電エラストマーアクチュエータ / グラビアコート / ナノシート / SWCNT / SBS / 曲げ剛性 |
研究実績の概要 |
近年、PVCゲルの様な誘電ゲルや誘電エラストマーを用いたソフトアクチュエータの低電圧駆動化や効率的製造手法の開発に関する研究が数多く報告されており、人工筋肉や触覚提示デバイスへの応用が期待されている。そこで本研究では、触覚提示デバイスへ適用可能な積層型誘電エラストマーアクチュエータ(DEA)の作製手法について検討することを目的とした。令和3年度は、高分子超薄膜(ナノシート)特有の被着体への高い密着性を利用することで、接着剤フリーな積層型DEAの作製方法についての検討を進めた。具体的には、roll-to-rollグラビアコート法を用いて単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をポリ(スチレン-b-ブタジエン-b-スチレン)(SBS)ナノシート上に塗布し、柔軟性や皮膚貼付性に優れるSWCNT-SBSナノシート電極(膜厚:101 nm)を作製した。高分子ナノシートの密着力は膜厚の減少とともに増大することがわかっているが、100 nm以下ではハンドリングが困難になるため上記の電極の膜厚を決定した。この電極を用いて、剛性の異なる 3種類の基材(ガラス、Ecoflex0030、ウレタン製皮膚モデル)上に10層積層の積層型DEAを作製した。誘電エラストマー層にはシリコンエラストマーの一種であるEcoflex0030を用いて作製した。この10層積層型DEAの曲げ剛性は105 nN・mと表皮よりも柔軟であり、人差し指上に貼付可能なことがわかった。この積層型DEAに2100Vの電圧を印加すると、Ecoflex0030基板上のDEAはガラス基板上と比較して2倍以上の変位歪み量を示した。最終年度では、エラストマーの絶縁破壊電圧等の電気特性に関して検討するとともに、エレクトロスピニング法を用いた伸縮性薄膜電極の作製や、3Dディスペンサーを用いることによる作製の半自動化に関しても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画では、PVCゲルを用いた織物構造アクチュエータ製造用の織機の開発を目標としていた。これに対し、令和3年度に現在在籍中の東京工業大学藤枝研究室がこれまで研究してきた高分子ナノシート技術を応用した積層型アクチュエータの作製手法の開発を目的として設定し、検討した。さらに、現在ナノシート由来の高い密着力を利用したアクチュエータ作製手法に関する内容の論文を投稿中である。このことから、進捗状況はおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、誘電エラストマー層の誘電率や絶縁破壊電圧等の電気特性を向上や、エレクトロスピニング法を用いた伸縮性を有する薄膜電極の作製を検討することで低電圧駆動化を目指すとともに、3Dディスペンサーを用いた積層型DEA作製の半自動化に関して検討することで、当初の目標の一つであるアクチュエータの効率的製造を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究目標の再設定や研究計画の再立案、さらに、COVID19感染拡大防止対策の一環である在宅勤務日の増加にともなった実験量の減少が、研究計画の遅延をもたらしたためである。今年度予算は、令和3年度に開発したDEAの特性や作製手法をさらに向上させるために、電気特性の測定装置類、3Dディスペンサ等のアクチュエータ作製にかかわる装置もしくはその周辺器具、材料に関して検討するために使用する計画である。
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