近年、PVCゲルの様な誘電ゲルや誘電エラストマーを用いたソフトアクチュエータの低電圧駆動化や効率的製造手法の開発に関する研究が数多く報告されており、人工筋肉や触覚提示デバイスへの応用が期待されている。そこで本研究では、触覚提示デバイスへ適用可能な積層型誘電エラストマーアクチュエータ(DEA)の作製手法、および令和4年度には、指屈伸や嚥下、血管の拡張の様な身体動作を検知可能な歪みセンサについて検討することを目的とした。令和4年度には、roll-to-rollグラビアコート法を用いて単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をポリ(スチレン-b-ブタジエン)(SB)超薄膜(SBナノシート)上に塗布し、柔軟性や皮膚貼付性に優れるSWCNT-SBナノシート電極を作製した。静電容量型センサの誘電体(DE)層として、我々の表皮と同等のヤング率を有するEcoflex 00-30を用いた。当該センサの静電容量変化は、0~100%の範囲で引張ひずみの増加に伴って増加し、センサが皮膚や血管などの身体動作により生じた歪みを測定できることが明らかになった。さらに、DE層を薄くしたときのセンサ感度に与える影響を検討したところ、DE層の厚みが260μmから40μmに減少すると、感度は0.64から1.13に増加することがわかった。当該センサを皮膚や血管モデルに貼付し,無線センシングユニットと組み合わせることで、指の屈伸運動、血管モデルの拡張、喉の嚥下運動などに応じて、静電容量値が変化することがわかった。本研究成果より、当該センサは生体組織に接着剤や固定具なしで貼付可能であり、無線ユニットと組み合わせることで身体動作による生体組織の変形をリアルタイムでモニタリングできることが明らかになった。触覚検知システムへの統合も可能であると考えられる。
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