研究実績の概要 |
本年度は,テレフタル酸を用いてOHラジカルの生成レートの推定を行うため,アルゴンガス雰囲気でテレフタル酸水溶液に正極性水上パルス放電を照射し,液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて副生成物の定量分析を行った。また,液中化学反応の速度定数を決定するパラメータの一つである温度に着目し,アルゴンガス雰囲気で正極性水上パルス放電を発生させたときの水中の温度変化を感温液晶カプセルを用いて可視化した。 テレフタル酸水溶液への放電照射においては,ヒドロキシテレフタル酸,2,5-ジヒドロキシテレフタル酸,p-安息香酸,および3,4-ジヒドロキシテレフタル酸が生成され,ヒドロキシテレフタル酸,2,5-ジヒドロキシテレフタル酸,およびp-安息香酸の生成量は同程度であることがわかった。従来,テレフタル酸を用いたOHラジカルの生成レートの推定においては,ヒドロキシテレフタル酸の生成量が用いられてきたが,前述の副生成物もまたOHラジカルと反応することから,OHラジカルの生成レートの正しい推定には副生成物を含めた解析が必要であることがわかった。 水中の温度変化については,放電先端部から水温が上昇することがわかった。また,水温変化の可視化観測結果がこれまでに行ってきた水中のpHの観測結果と一致することから,水温変化の位置分解測定により間接的に水中のpHの変化を可視化することが可能となり,正極性の放電を照射した際に放電電解で生じるH+イオンは,放電先端部から発生することがわかった。
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