研究課題/領域番号 |
19K14958
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
全 俊豪 東京工業大学, 工学院, 助教 (90781310)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エネルギーキャリア / 大気圧プラズマ / 窒化 / 水素利用 / クリーンエネルギー |
研究実績の概要 |
近年,低炭素社会の実現に向けて発電量が不安定な再生可能エネルギーを化学エネルギー(水素など)の形で貯蔵・輸送する技術の重要性が叫ばれている。しかし,水素は直接貯蔵しにくいため,有機ハイドライトやアンモニアといった水素キャリアを用いる方法が有望視されている。有機ハイドライトは安全な水素キャリアであるが,質量水素密度は6 mass%程度である上,脱水素に約10%程度のエネルギーが必要であるためエネルギー変換効率が低いという問題点がある。一方アンモニアは,17.8 mass%の質量水素密度を有しており,大量生産技術が確立され,燃料という形で直接利用できるエネルギーキャリアとして現在有望視されている。しかし,アンモニアを再生可能エネルギーで生成した少量の水素 (10トン以下/日)から合成すると生成コストが高いことから,現在のアンモニア合成手法はメタンを水素源としており,CO2フリー化が重要な課題である。また,アンモニア自体が爆発物と劇物に指定されているので,取り扱う際に安全面を配慮する必要といった問題も存在する。そこで,本研究では窒化マグネシウムを新しい安全なアンモニアキャリアとして提案し、アンモニア合成でのCO2フリー化と安全性の問題の解決を目指した新たなクリーンエネルギー循環システムを提案します。 これまでの研究成果で窒素水素混合ガス雰囲気下の大気圧プラズマ合成手法を用いてCO2フリーの窒化マグネシウムを合成することは可能であること突き止めた。本研究で提案する大気圧プラズマ合成手法は,加熱などの準備が必要なく,小規模で消費電力を自在に変更できることから余剰電力の有効活用に合致した合成手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究到達目標は大気圧プラズマを用いた窒化マグネシウム合成装置の購入・セットアップ,大気圧プラズマ中に生成した窒化処理に有効な化学的活性種の特定,窒化メカニズム解明開始である。現在の研究進捗状況として,大気圧プラズマ窒化装置のセットアップは完了しており,有効な化学的活性種はNHラジカル,窒化メカニズムとして一旦還元反応が起きてから窒化反応が起きることがわかったので,研究到達目標をほぼ達成できている。また,窒化メカニズム解明研究の際,大気圧プラズマを用いた流動層プラズマの形成が窒化効率向上に大きな影響を与えることを突き止めた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引継ぎ窒化メカニズム解明を行うと共に,流動層プラズマの形成の要因を調べ,他の応用研究にも適応する可能性を模索していく。また今年度の後半には窒化効率向上に向けて,実験を重ねていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は近い研究テーマで他の財団助成金も助成したので,物品費用を使用しなくても研究は問題なく推進できた。来年度は科研費を使用して,物品購入をしていく予定である。また,新型コロナウイルスの影響で春の学会がほとんどキャンセルになったので,旅費は当初より少なくなった。
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