研究課題/領域番号 |
19K14961
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
關根 惟敏 静岡大学, 工学部, 助教 (00765993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多導体ケーブル / ベクトル基底関数 / アイソジオメトリック解析 / 特性解明 / 形状最適化 / 重回帰分析 / 最適化アルゴリズム |
研究実績の概要 |
アイソジオメトリック解析を電磁界解析へ汎用的に応用するための,ベクトル基底関数を用いた新手法を提案した.加えて,「重回帰分析を用いた特性解析」と「最適化アルゴリズムを用いた形状最適化」を,3本の導体ケーブルに適用し,今後の基盤となる知見や方法論を創出した.まず,アイソジオメトリック解析に基づく新手法では,電磁界解析の汎用化と高速化を実現した.また,「特性解析」では,最小二乗法に基づく重回帰により,ケーブルを構成する導体線(ワイヤ)の半径と位置を形状パラメータとし,どの形状パラメータが信号ノイズへ強く影響するのかという分析を行った.結果として,「グラウンド線の半径」と「グラウンド線と他のワイヤとの距離」,及び「グラウンド線以外のワイヤ同士の距離」が重要であることが分かった.また,「形状最適化」では,重回帰分析によって重要だと分かった形状パラメータのみを用いて,信号ノイズを最小化するようなワイヤの半径や配置を,最適化アルゴリズムによって導いた.最適化アルゴリズムとして,遺伝的アルゴリズムを用いた.結果として,「グラウンド線の半径が他のワイヤよりも大きく」かつ「他の2つのワイヤがグラウンド線を挟む」ような形状が導かれた.「半径の大きなグラウンド線を,他のワイヤで挟むような構造」が,なぜ信号ノイズを減らせるのかは,理論的に説明可能である.しかし,このような配置が信号ノイズを減らせるということは,当該分野ではこれまで知られていなかったため,新たな知見が得られたという意味で大きな意義がある.また,この新たな知見が,人間が一から考えたものではなく,重回帰分析と最適化アルゴリズムによって自動的に得られたということも,今後行う機械学習手法の適用が可能であることを示唆しており,今後の研究の基礎となる重要な知見が得られたと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は,多導体ケーブルの解析へアイソジオメトリック解析を適用し,機械学習のデータセットとなる,多導体ケーブルの電気的特性の算出のみを目的としていた.しかし,対象が3本のワイヤから成るケーブルという簡易的な問題であったり,機械学習ではなく従来の分析や最適化の手法とはなっているものの,データセットの算出だけでなく,特性分析と形状最適化が一通り行える方法論を確立できたため,当初の計画以上に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに,機械学習の手法を性急に適用することはせずに,まずは簡易的な問題に対して,従来の重回帰分析や最適化アルゴリズムによって多導体ケーブルの分析や最適化が可能であるかどうかを確認した結果が得られている.今後は,これらの従来の分析や最適化の手法の代わりに,機械学習の手法を適用して「特性分析」と「形状最適化」を行う.また,多導体ケーブルの本数が3本である場合しか検討していないため,10本以上の多導体ケーブルに対する応用可能性も調査する.また,現在は多導体ケーブルの電気的特性としてSパラメータを簡易的に算出している一方,本数が増えて複雑化すると,アイソジオメトリック解析による効率化が不可欠であるため,アイソジオメトリック解析による電気的特性の算出もプログラムへと実装する.
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