研究実績の概要 |
本研究は化合物パワー半導体によるMHz級高周波駆動電力変換回路に用いる磁性材料のモデリング、磁気部品設計、回路実装に関わる応用技術の検討を実施する。化合物パワー半導体によるMHz級のスイッチング周波数で高電力密度変換器を作成した場合、受動素子に対する発熱負担が大きくなり、中でもインダクタやトランスをはじめとする磁気部品で過度な損失・発熱が強いられる。これら問題を解決するため、本研究はMHz駆動対応の磁気部品のモデリングや設計、発熱抑制技術、電力変換回路への実装技術の確立が目的である。当該研究のアプローチとしては磁性材料の選択から、これらの材料特性のモデリング、回路への実装手段、シミュレーション、実証的評価を総合的に実施するものである。 最終年度である2021年度はMHzのスイッチング周波数の磁気部品について以下の3点について取り組んだ。1つ目は回路駆動時における温度上昇が予見可能な磁性材料の鉄損特性(温度依存)を考慮した磁気-電気-熱回路連携1Dシミュレーション技術の構築とその評価を行った。実証実験を行った結果、作成したシミュレーションモデルは回路駆動時の磁気部品の温度上昇を予測することが可能であり、フロントローディング設計を実現する上で有益である。2つ目は低背化実装へ向けて有機材と粉末磁性体を掛け合わせた塗布型磁性体コアの基礎検討を行った。塗布型磁性体コアは構造自由度が高く、鉄を主成分とすることで高温対応が可能である。従来の固体の磁性体コアと相対比較の結果、温度上昇抑制の観点から提案方式の優位性を見出した。3つ目は高周波駆動で鉄損特性が優れているフェライトに対する新しい低背磁気構造の提案・実証評価を実施した。 従来の立体コア構造の磁性体コアと比較して提案構造は大きく温度上昇を抑制することができる。また, それ以外にも既存の磁性材料について体系的にまとめることができた。
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