本研究では,電力系統の不平衡電圧の新しい対策として,誘導電動機内部に備えた不平衡電圧補償回路で不平衡電圧を補償することで,外部の補償回路を用いることなく運転継続可能な不平衡電圧補償機能付き誘導電動機の提案をしている。対称座標法を適用した不平衡電圧補償器について,実機の750 W誘導機のシミュレーションを行い,モータ電流をバランスさせトルク脈動を低減できることを明らかにした。また,実機検証については補償電圧を出力するところまでは動作確認済みであり、不平衡電圧補償器の動作確認の実験を継続中である。 定常状態のシミュレーションにおいて,VUCなしの場合では,モータ電流が不平衡であり,a相の電圧が理想値の115.5 V(RMS値)から80%の値92.4 V(電圧不平衡率:7%)に低下すると負荷トルクも供給電圧の2倍の周波数で脈動することが分かった。一方,VUCを使用した場合では,VUCによる不平衡電圧補償の効果として不平衡電圧発生時でもモータ電流の平衡が保たれ,トルクの脈動がなくなることが分かった。 過渡状態のシミュレーションにおいて,相電圧vaの振幅がステップ変化したときのVUC出力電圧の応答結果より,制御アルゴリズムでは、位相遅延π/ 2を生成する動作が行われるため,補償電圧が安定して出力されるまでには半サイクル(10ms)必要となる。その結果,トルクを一定に保つのに40ms要することを明らかにした。 以上により,シミュレーションにより,不平衡電圧補償器付き誘導機の定常状態と過渡状態の両方の駆動特性を明らかにした。
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