研究課題/領域番号 |
19K14969
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研究機関 | 公立諏訪東京理科大学 |
研究代表者 |
佐藤 大記 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 助教 (80772607)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電池管理システム / セルバランス回路 / セル監視回路 / 電気二重層キャパシタ / 蓄電池 |
研究実績の概要 |
近年,電力貯蔵装置の需要の高まりから,内部に搭載される蓄電池を適切かつ安全に運用するための電池管理システムの需要も飛躍的に高まっている。電池管理システムには,各セル間の電圧のばらつきを補正するセルバランス機能と蓄電セルの状態を常時監視するセル監視機能が主として求められるが,これまで両者は切り離された単一のものとして考えられており,効率や回路規模の面で課題があった。本研究では,セルバランス機能とセル監視機能を1つの回路に統合し,互いの機能が相補的に作用することで高効率なセルバランス機能と高精度なセル監視機能を両立した,革新的電池管理システムの構築を目指す。 本年度ではまず,セルバランス動作に伴う電圧降下による蓄電セルの状態監視精度への影響を定量的に示すことを目指した。外乱要因である温度変化に起因した蓄電セルのESR成分と容量成分の変動,ならびに回路の寄生抵抗分の変動を,それぞれデータシートと実測定から算出し,これらを考慮した理論解析とシミュレーションを行った。その結果,蓄電セルのESR成分による影響が最も大きく,最大で30%程度の推定誤差を生じることが明らかとなった。次に,前述の電圧降下による影響を補正する制御手法の構築と実機実験による基礎検証を行った。その結果,補正手法の適用により,推定誤差を約1/10に低減可能であることを確認した。次年度は,温度変化による各パラメータ変動の影響を加味した補正手法の構築,ならびに24V級の蓄電モジュールを用いた実機検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも述べた通り,本年度実施予定であった①セルバランス動作が蓄電セルの状態監視精度に与える影響の解明,ならびに次ステップである②高効率なセルバランス機能とセルの常時監視機能を両立する制御手法の構築の基礎検証までを,当初計画通りに完了した。以上の理由から,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,電圧降下補正手法の検証を進める。今年度の基礎検証では考慮されていない,温度変化等の外乱による影響を加味した補正手法を構築し,シミュレーションおよび実機実験による基礎検証を行う。それらの結果から,最終ステップである24V級蓄電モジュールを用いた実機検証を行い,高効率なセルバランス機能と高精度なセル監視機能の両立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として,購入予定であった測定器が価格改定により安価に入手できたこと,および当初計画で予定していた研究調査をCOVID-19の影響により中止したことが挙げられる。 次年度の実機検証において,当初計画よりも大電流での試験が可能となるような実験設備の整備に充てる。また,国内外の状況を注視しながら,改めて研究調査を行う計画である。
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