研究課題
本研究では,電気自動車の車載充電器の小型化・低コスト化を目的とした,電力変換器のスタートアップ手法の開発および,その信頼性の評価を行う。これは,電力変換器のパワーデバイスを極限状態において動作させることによって,変換器の低コスト化・小型化へのボトルネックであったスタートアップ回路を不要とできる技術の研究である。本年度は,スタートアップ時の直流側短絡に起因したパワーデバイス熱ストレス評価と,直流側短絡を用いたスタートアップ法の耐久性評価を実施し,下記の成果を得た。(1) 各デバイスにおいて長時間の短絡を1回ずつ行うと,デバイスのピーク温度が高くなるため,ゲートの周辺が劣化する。この一方,短時間の短絡を複数回繰り返す場合,ピーク温度が抑制されるため,ゲートまわりの劣化はほぼ零に抑制できることを明らかにした。(2)トレンチゲートMOSの場合,2~5千サイクル程度のスタートアップ動作により,顕著なデバイスの劣化が観測された。この一方,プレーナーゲートMOSでは,1万サイクルを超えても,オン抵抗変化率は2割以下となり,デバイスの劣化がほぼないことを明らかにした。すなわち,デバイスのチップ面積が同程度である場合,プレーナーMOSの方がトレンチMOSよりも圧倒的に劣化が少ないことを示した。(3) さらに,同じプレーナーMOSであっても,電流定格の小さい,即ち,チップサイズの小さいデバイスを適用した方が,1万サイクルにおけるオン抵抗変化が小さく,5%以下に抑制できることを明らかにした。以上のことから,本研究で提案するスタートアップ法は,プレーナーMOSのインバータであれば,充電器の寿命に影響せずに適用可能である。また,提案法は,デバイスの電流定格増加も不要である。即ち,専用のスタートアップ回路がなくても,従来のスタートアップ回路を用いた場合と同等の特性が得られることを明らかにした。
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Microelectronics Reliability
巻: 114 ページ: 113775~113775
10.1016/j.microrel.2020.113775