磁気浮上回転機の一種であるベアリングレスモータは,電磁気力により回転子を支持することで軸受が不要なモータであり,軸受の摩耗に関わる問題を解決できる。一方で,ギヤなどの減速機が利用できないため,低速高トルクの駆動には不向きである。そこで,ベアリングレスモータと,構造的に低速・高トルク駆動に適するバーニアモータを機能的に統合することで,磁気浮上の非接触という特長を維持したままに高トルクの発生を可能とする。 本研究課題では,提案する永久磁石を用いたコンシクエントポール型のベアリングレスバーニアモータについて,(1)軸支持力の発生に対する電機子反作用の影響の検討,(2)トルクリプルに対する磁気的なギヤ比の影響の検討を実施した。 (1)について,磁気回路法と有限要素法による解析により軸支持力に対する電機子反作用を検討した。従来型のコンシクエントポール形ベアリングレスモータでは電動機の極数が8極以上の場合には磁気支持力に対して電機子反作用の影響が生じないことが知られていたが,バーニアモータのように空隙のパーミアンス分布により磁束が変調される場合は,変調により生じた低い次数の高調波磁束分布が軸支持磁束に干渉して軸支持力の方向と大きさを変化させることが明らかになった。 (2)について,(1)と同様に磁気回路法と有限要素法による解析により提案モータのトルクリプルの次数がバーニアモータの磁気的な減速比に比例することを明らかにした。 当初の計画では,これらの検討結果を踏まえて軸支持力に対する電機子反作用の影響の小さい構造や,トルクリプルの生じにくい構造を検討する計画であったが,コロナ禍による人的・時間的制約により改善構造の検討については未実施である。今後,これらの課題を解決する構造を検討していきたい。
|