純水を変圧器の絶縁冷却媒体として使用するためには、抵抗率の向上と抵抗率低下の抑制が必要である。本研究では、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)で被覆した金属を純水中で用い、窒素ファインバブル(FB)や高分子を純水に付加することで「純水の抵抗率と絶縁耐力を高めることができるか否か」を明らかにすることを目的として、3年間で「①窒素FB付加純水の抵抗率と絶縁耐力の解明」、「②高分子付加純水の抵抗率と絶縁耐力の解明」、「③窒素FBと高分子の同時付加純水の抵抗率と絶縁耐力の解明」を実施する計画を立てた。 最初の2年間では、まず①の研究を実施し、窒素FBの付加により純水の抵抗率は1.8倍程度、絶縁耐力は1.3倍程度、それぞれ向上することがわかった。また、室内空気雰囲気下にて実施した②の研究では、分子量が二千から百万の非イオン高分子を5~10 ppm程度純水に付加することで、純水の抵抗率と絶縁耐力が向上することが示唆され、分子量が三千から二万のポリエチレングリコール(PEG)を5~20 ppmの範囲で純水に付加することで、抵抗率が1.4倍程度向上することがわかった。さらに、DLCやグラフェンで被覆した金属を純水中で用いることで、純水の抵抗率低下の抑制や絶縁耐力の向上を実現できることがわかった。一方、③の研究では、窒素FBと高分子の同時付加によって純水の抵抗率と絶縁耐力を高めることができる条件の解明には至らなかった。 最終年度の令和3年度は、乾燥窒素雰囲気下で①と②の研究を実施し、試験容器内の窒素置換回数が多いほど、また、分子量が三千から二万のPEGやポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを1×10^(-7)~1×10^(-3)w/v%の範囲で純水に付加することで、純水の抵抗率を高く維持できることと、窒素FBの付加による純水の絶縁耐力への影響はほとんどないことがわかった。
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