本研究の目的は、省エネ性の高いモータ家電を国際普及させるために、力率改善回路や嵩の大きい電解コンデンサ、重いリアクトルなどが一切無いシン プルで小型軽量な究極の低コストインバータを実現することである。 インバータの低コスト化への最大の課題は、規格により規制されている電源高調波を抑制するために付加回路が必要なことであり、これがインバータを搭載した省エネモータ家電の国際普及の弊害となっている。 本研究では、最も簡素な単相ー三相電力変換回路である電解コンデンサレスインバータにおいて、インバータから電源までの数式モデルを新しく構築し、電源 も考慮したモータドライブシステムを確立する。そして、インバータ出力電圧と直流リンク電流の関係を利用し、電源電流を正弦波に制御する。また、モータ電流制御系を比例制御のみで構成することで、インバータ出力電圧の修正をモータ電流指令上で行い、電源電流制御とモータトルク制御を両立する制御系を実現する。提案する制御手法の理論の妥当性については実機実験で評価を行なった。実機実験により、電源電流を指令値通りに正弦波に制御しつつ、モータ電流制御においても指令値へ応答値が追従するように制御できており、電源電流制御とモータトルク制御の両立が達成できた。また、電源電流高調波解析結果より、世界で最も厳しい欧州のIEC電源高調波規制をクリアできていることも確認できた。提案システムでは高調波規制を満たすための付加回路なく電源高調波を抑制するため、本技術の確立により空調システムの大きなコスト削減が期待できる。
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