本研究は、仮想ネットワーク機能(VNF: Virtual Network Function)の順序制約緩和を考慮したサービスチェイニングにおいて、実ネットワークシステムへの適用性が高い経路およびVNF配置決定方式の計算モデルを確立することを目的とする。 最終年度である2021年度は、これまでに開発した計算モデルに基づくサービスチェイン制御手法の、実システムへの適用可能性に関する研究を行った。ネットワークの規模が大きくなった場合、開発した計算モデルを用いてVNF配置の最適解を求めるのには長い計算時間を要する。通信要求が動的に到着あるいは終了する現実的な環境下においては、最適解が得られる前に要求が変化する可能性がある。そこで、最適化問題を解く過程で得られる暫定的な解に応じて、ネットワーク上のVNF配置を段階的に改善する制御手法について検討を行った。提案手法は2つのステップから成り、最初に発見的アルゴリズムで得られたVNF配置を用いてサービスを開始した後、最適なVNF配置の計算を開始する。最適解の計算途中で発見された実行可能解を、あらかじめ定められたポリシーにしたがってネットワークに適用する。これにより、許容可能な再構成コストの範囲内で、ネットワーク上に配置されるVNFの数を効率的に削減することが可能になる。計算機シミュレーションにより性能評価を実施し、VNFの配置数の削減効果を確認した。 本研究成果の一部は、雑誌論文(電子情報通信学会)、国際会議(IEEE HPSR、IEEE CCNC等)、および国内研究会(電子情報通信学会、電気関係学会関西連合大会)で発表された。
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