研究実績の概要 |
ネットワークの低遅延化は、多くの産業で将来利用が期待される遠隔操作や自動操縦といった情報通信技術を活用した取り組みにおいて重要な課題である。本研究では、ネットワーク間接続光ノードにおける処理遅延を1000分の1程度に低減するため、変調方式変換技術を確立することを目的とする。将来の1テラビット級伝送で適用される4相位相変調(QPSK),直交振幅変調(QAM)に関する変換技術には、波長およびチャネル数の変換技術の確立も必須となる。従来法と比較し省電力で実現できる原理を見出すため、光・電気信号処理技術を用いた変換法を検討する。
当初計画では2021年度は64QAM信号に関する変換技術を検討する予定であったが、64QAMは情報量は多いがノイズ耐性が低く伝送距離が限定的であり光通信網への適用が現時点で見通せていないため、研究計画を見直して下記の方式について研究を実施した。
QPSKから16相直交振幅変調(16QAM)への変調方式変換技術および波長・チャネル数変換技術:光信号処理技術および電気光学効果を用いた変換手法を考案した。波長の異なる2つのQPSK信号を、遅延干渉計を用いて振幅が4段階ある信号に変換し、それらを受光してIQ変調器のドライブ信号とすることで、任意の波長の連続光光源を変調し16QAM信号に変換するものである。本提案の実装法、変換特性、信号品質を計算機シミュレーションで明らかにした。変換特性の数値目標である、遅延時間5マイクロ秒以下及びエラー訂正前のビット誤り率3.8×10^(-3)以下は達成できることを明らかにした。この研究は2019年度にも実施したが、当時は非線形光学効果である位相感応増幅を用いていたため励起光が必要となり、消費電力や制御の点で難点があった。今年度は受動回路である遅延干渉計のみで実現可能な構成を提案し、励起光が必要なく消費電力や制御の点で有意である。
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