研究実績の概要 |
2021年度は、主として2019, 20年度の2年間を通して確立した多次元電波伝搬解析方式を活用した通信効率改善法に関する検討に従事した。具体的に、自動運転の実用化に向けて今後の更なる普及が見込まれる車車間/路車間通信システムを対象に、次の2つの課題に従事した:(a) 送信電力設計法および(b) 車載映像の安定かつ高画質なストリーミング法の検討。 (a) 送信電力設計法では、クラウドに蓄積した瞬時受信電力の経験的累積分布関数に基づく送信電力制御方式を提案した。通信路が遮蔽される車車間通信環境を対象とした特性評価により、観測データ数の増加に応じて通信成功確率を改善できることを明らかにした。同様に、他ユーザへの干渉を抑制しながら自リンクの送信可能電力を向上可能であり、無線ビッグデータ活用によって通信効率を改善できることを示した。 また、(b) 車載映像の安定かつ高画質なストリーミング法の検討では、複数の遠隔運転車両が走行する環境対象に、基地局側からの各車両の通信パラメータ設計法に着目した。基地局が電波マップに基づいて各車両のQoS (Quality of Service)を予測し、その結果に基づいて伝送映像の圧縮率を適応制御する。圧縮伝送された映像は、基地局側で深層学習器を用いた超解像により限られた劣化で伝送可能である。実際の車載映像を用いたエミュレーション評価により、限られた無線リソースでも安定した画質で複数の車載映像をストリーミング可能であることを明らかにした。 最後に、本研究課題に関する活動を通して得られた研究成果を、招待講演の形で電子情報通信学会信号処理研究会にて発表した。これまで確立した方式に加え、それらの検討を通じて判明した今後の研究課題や関連する要素技術についても整理し、研究成果の普及に努めた。
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